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2016年7月22日12時00分

トップアスリートの約4割が無月経や月経不順に。競技を続けるために知っておきたい“女性ならでは”の体のこと

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国立スポーツ科学センター683名の調査によると、トップアスリートの約4割が無月経を含む月経周期異常であるという。年代別にみると、中学生や高校生では4割を超えている。また、7割を超えるアスリートが月経前の身体的・精神的な変化を自覚。コンディションだけでなくパフォーマンスにも大きく関わってくる月経だが、指導者・選手共に「無いほうがラク」という思い込みで、月経異常に無自覚になりがちな現状も。
今日は、女性だからこそ向き合わなければならない、「月経」との付き合い方に関して、女性アスリート健康支援委員会が取り組む「がんばれやまとなでしこプロジェクト」を紹介。
月経不順が引き起こす、疲労骨折のリスク
「過去にもスポーツ医学において女性特有のトラブルは扱われてきましたが、日本においては社会認識あるいは産婦人科医そして指導者の認識の中で注目度が低いものでした。国立スポーツ科学センターよりトップアスリートの調査結果が報告されたことにより、女性アスリートの健康管理、特に女性特有の疾患等について産婦人科医がスポーツ関係の団体と協力して、正しい知識の啓発と対応をする事が必要だという目的から女性アスリート健康支援委員会が発足しました」
と語ってくれたのは、女性アスリート健康支援委員会事務局長を務め、聖路加国際病院副院長・女性総合診療部長を務める百枝幹雄医師。

「無月経や月経不順は月経異常の症状のうちの一部です。無月経とエネルギー不足、骨粗鬆症の3つは女性アスリートの三主徴といわれ密接な関係にあります。3ヶ月以上月経が停止している状態を続発性無月経といいますが、このうち継続的な激しい運動とエネルギー不足が原因と考えられるものに『運動性無月経』と初経がなかなか来ない「遅発月経」とがあります。競技にもよりますが、陸上長距離選手や審美系と呼ばれる体操、新体操、フィギュアスケートなど体脂肪率が数%台と低くなる傾向にある選手に多く見られます。また、過度な食事制限やオーバートレーニングによって運動による消費エネルギー量に対して食事などによる摂取エネルギー量が不足している状態が続くエネルギー不足も要因のひとつです。卵巣を刺激する脳からのホルモン分泌のコントロールには脂肪も関係し、エネルギー不足により卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが止まると、月経がこない無月経の状態になってしまいます。このエストロゲンは骨量の維持にも関わり無月経の状態が続くことにより骨密度が低下、骨が弱くなってしまうのです。その状態で運動負荷を加えると疲労骨折のリスクが高まります。女性は11歳~14歳に骨密度の年間増加率が大きくなり、18歳〜20歳までに最大骨量を獲得し以降は増加しないといわれているため、この年代に無月経などにより骨量が低下すると、最大骨量の獲得ができず、将来的に、競技の継続だけでなく、引退後の生活にも影響が大きく出てしまう可能性があります」
月経と上手に付き合っていくための方法は?
「パフォーマンスの上で月経がないことが好都合と感じることもあるかもしれませんが、最終的には非常にデメリットが多いということを知っておきましょう。国立スポーツ科学センターの調査では月経痛や月経随伴症によりパフォーマンスが落ちることも報告されています。しかしながら、産婦人科医に相談することで治療による症状改、大事な大会や合宿などに合わせた月経移動などが可能になります。成人になれば本人が自分に合ったクリニックや病院を探すことも可能でしょうが、思春期の世代であれば、指導者や保護者がきちんと話をできる医師を見つけることが大切です。また、アスリートにとって最も身近な指導者と保護者に知っておいてほしい事は、若いうちにエネルギー不足の状態で専門的な運動を過度にやらせすぎてしまうと、若い世代の時に良い成績をおさめても、結局健康を害し、早い段階で引退していく可能性も高くなるということです。体がきちんと出来上がってからも長く競技を続け、成績を伸ばしていくためにも、成長の過程に合わせた指導を行うことが大切です」

月経時期のコントロールや薬を服用することでのリスクはないのだろうか?

「月経の症状を軽くしたり、月経時期をずらす治療を繰り返すことでのデメリットはまったくありません。ホルモン剤は怖いというイメージがあるかもしれないですが、むしろ月経痛が強いなどの症状を持つ場合はきちんと治療しておいたほうが将来的に子宮内膜症などの病気を防げるなどメリットも大きいのです。指導者向け講習会などでも誤解されることが多く、薬やピルを使うことへの抵抗感が強い場合もありますが、指導者が正しい知識を持たない限り、アスリートに浸透はしません。また、産婦人科医へ相談すればアンチ・ドーピングの視点もきちんと考慮してケアしていくので安心してください」
きちんとした治療・指導を受けるために「がんばれやまとなでしこプロジェクト」が行う取り組みとは
「産婦人科医にも得意な分野があるため、アスリートに向けてどのような治療が良いのか、アンチ・ドーピングに関する十分な知識を有していない場合もあります。「がんばれやまとなでしこプロジェクト」では産婦人科医と知識・情報を共有し、アスリートや保護者、指導者からの相談を受け入れるプラットフォーム作りをまず進めています。同時に日本体育協会主導による指導者向け講習会、スポーツ庁による都道府県学校部活動の顧問対象講習会への講師派遣、養護教諭研修会への講師派遣など、女性の身体や月経に関わる正しい知識を広める活動も行っています。最短でもあと3年ほど時間は必要だと感じていますが、最終的には各地域で産婦人科医と指導者や養護教諭、そしてアスリートとの連携がうまくできるような関係を構築できればと思っています。現状、私たちのサイトでは地域に合わせてアスリートに適切な診断・治療ができる産婦人科医のリスト作りも進めており、将来的には各都道府県に数名〜10名くらい、診療可能な産婦人科医がいるようになればと思っています」

女性の体に毎月起こることだからこそ、きちんと向き合い、パフォーマンス向上、そして未来の自分のためにも専門家への相談を欠かさないようにすること。それは、アスリート本人だけでなく、保護者や指導者などアスリートの身近にいる人たちの役割が重要になるのではないだろうか。各地域の産婦人科医情報や講習会の開催情報、女性アスリートの今と未来の健康を守るためのわかりやすい小冊子などは「がんばれやまとなでしこプロジェクト」サイトをチェックして。
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