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~海外ゴルフツアーの『結果ではない』情報を発信~
[全米オープンの経済効果とは?]

2015年6月1日10時00分

World Golf TOUR Reports
~海外ゴルフツアーの『結果ではない』情報を発信~
[全米オープンの経済効果とは?]

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やっぱり凄い!
メジャー大会の経済効果は100億円以上に!
今年の全米OPは、スコットランドを思わせるリンクスタイプのコース。 右には、コーポレートテントがいくつも見える。- 写真・Getty Images -
今年の全米OPは、スコットランドを思わせるリンクスタイプのコース。
右には、コーポレートテントがいくつも見える。- 写真・Getty Images -
文・武川玲子(Reiko Takekawa)
Vol.2



 米男子ゴルフメジャー2戦目全米オープンが6月18日から、米国ワシントン州・チェンバーズベイGCで開催している。同コースの名前をこれまで聞いたことのある人はほとんどいないだろう。それもそのはず、このコースは2007年に開場したばかりで、全米オープンを開催するために造られたのだ。主催するUSGA(全米ゴルフ協会)の肝いりで、同コースが所在するワシントン州ピアース郡が、太平洋を望む広大な土地にスコットランドを彷彿とさせる“リンクスタイプ”のコースを創設、ようやく世界中にお披露目のときがやってきた。

 四大メジャーの1つで、米国のナショナルオープンの全米オープンは、ゴルフ大会の中でも一大ビジネス。USGAのほとんどの収入はこの全米オープンから得られているといっても過言ではない。そのお陰で全米女子オープン、全米シニアオープンやアマチュアの試合も存分に主催できている。

 開催コースは5年以上前に決定され、毎年開催は東海岸(中西部も含む)地域、西海岸(山岳時間も含む)地域とタイムゾーンが入れ替わるように設定されている。昨年は東海岸時間のパインハーストGCで開催され、今年は西海岸時間のチェンバーズベイGC、そして来年は東海岸のペンシルベニア州のオークモントCCという具合だ。

 コースを選定するには、ナショナルオープンにふさわしい難易度の設定ができること以外に多くの条件がある。1週間で35~40万人が訪れるわけだから、周辺に十分な宿泊施設があるか、ギャラリー用を含めて駐車場を確保できるかなどはもちろんだが、大きな問題としてコース内にギャラリースタンドとは別に『コーポレートテント』を建てるスペースがあるかということ。これはテレビ中継でもよく目にするホール間に立てられた巨大な白いテントのこと。『コーポレート』つまり色々な企業がこのテントを購入、テントの中で食事ができるテーブルがあり、ここで飲んだり食べたりしながら大会を観戦するいわゆる“接待用”の観戦チケット。

 テントを丸ごと購入することもできるし、テーブル毎も可能。さらに1週間通しでも、練習日から最終日まで1日ずつ個別に購入することもできる。企業は顧客や取引先を招待して営業ツールに活用するというわけだ。その値段だが今年はすでに販売が終了、参考までに来年のオークモントCCの17番、18番ホール横という最高の場所で1テントに観戦チケット100枚付きで1週間22万5000ドルなので日本円では3000万円程度。1テーブルの観戦チケット12枚で4万4000ドルだから約500万円。つまりこれらのコーポレートテントはUSGAにとって大きな収入源となるから、コース選定にも重要な条件となる。

州外からもゴルファーを集めることで
さらなるビジネスチャンスに繋がる


 大会開催を希望するコースは、USGAにプレゼンテーションをし、いくつか問題点を指摘されるとそれを直してまたプレゼン、というのが何年もの間繰り返される。古いメンバーコースではメンバーの同意を得られるのが難しいこともあるが、それでも全米オープン開催コースとなればその名前は世界中に知れ渡るから経済効果は計り知れない。昨年2週連続で同男女大会が開催されたパインハーストGCには40万人以上の人が訪れ、経済効果は約1億4000万ドル(約160億円)以上で、その後の知名度アップなどでノースカロライナ州を訪れた観光客などを含めると、2億4000万ドル(約280億円)と地元紙は試算している。

 全米オープンは、メリオンGC(13年)、シネコックGC(04年、18年)と名門のメンバーコースで開催される一方、昨今は“誰でもプレーすることができるパブリックコース”がトレンドになっている。これまでも10年に一度開催されているペブルビーチGCはパブリックだが高級リゾートコース。それとは別に市営のパブリック、ニューヨークのベスページGC、カリフォルニア州のトーリーパインズGCがその例。つまり全米オープンが開催された超難コースを市民なら30~40ドル(4000~5000円)でプレーすることができる。

 今年のチェンバーズベイGCもピアース郡が経営するパブリックコース。市営よりはちょっとお高く州外の住民は275ドル(約3万円)だが、それでも誰でもプレーできるのは魅力的。115回の歴史を誇る全米オープンがこの米国北東地域で開催するのは史上初めて、ワシントン州は今年の全米オープンで今後同州を訪れるゴルファーは飛躍的に伸び、経済効果は2億ドル(240億円)以上になるだろうと予測されている。100年以上の歴史を誇る今大会、年を兼ねるごとに競技面だけではなく、ビジネス面から見ても成長し続けていることがうかがえる。

■プロフィール
武川玲子(たけかわ・れいこ)ゴルフジャーナリスト。
米国を拠点に、米PGAツアーと米LPGAツアーを中心に精力的な取材活動を続けている。2011年にはベストゴルフジャーナリスト・オブ・ザ・イヤーを受賞。
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