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2021年5月20日15時52分

「データアナリストの経験と商社で培った経営戦略を活かしています」トラックマン野球部門 星川太輔さん(前編)

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知りたい!就きたい!スポーツの仕事
連載22回目〜スポーツテック編〜
トラックマンの野球部門責任者である星川さんに話を聞きました


「スポーツ業界で働きたい!」と思っている学生や転職を希望している人が多くなる中、どんな職種があるの?どんなスキルが必要なのか?など分からないことが数あり、仕事の実際を知ることが意思決定には重要となる。そこで、スポーツを仕事としている人にインタビューし、仕事の“あれこれ”を聞く。

名前:星川太輔(ほしかわ・だいすけ)さん
職業歴:2000年〜

仕事内容
・トラックマンの野球部門責任者
・新規事業コンサルティング
・野球振興活動

取材・文/佐藤主祥

「野球が好き」な気持ちと「やりがい」で進んだ
データアナリストへの道
ボールの速さ、回転数、角度などのデータを正確に読み取ることができる高性能弾道計測器『トラックマン』。2014年に日本球界で初めて東北楽天ゴールデンイーグスが導入し、2018年からは広島東洋カープを除く11球団が活用している。

現在、トラックマン野球部門の責任者を務めている星川太輔さんは、中学まで野球部でプレーし、慶応志木高校では応援部の団長を務めた。慶応義塾大学進学後は、再び野球部に入部。 大学1年時には、プレーする側からデータ班としてチームをサポートする側に回った星川さん。だがその時、今の仕事に関わる大きな転機が訪れた。

「スポーツのデータ分析・提供を行っているアソボウズ(現・データスタジアム)が野球分析システムを開発し、慶應野球部がそのテスト用ソフトを取り入れることになったんです。そして、そのソフトを使う担当が僕になりまして(笑)。それまで全て手書きで紙にまとめていた仕事を、パソコンを使ってデータ化することで、より詳細に分析することが可能となりました。今振り返ると、この大学での経験が今の事業をするにあたって大きかったように思えます」

実際、野球分析システムを使用していたことが実績となり、アソボウズでアルバイトをスタート。主にプロ野球を担当し、年間400試合ものデータ分析を行った。就職活動をする際には、さまざまな大手やベンチャー企業を受け、いくつもの内定を獲得。それでも星川さんは、直接オファーがあったアソボウズへの就職を選択した。

「正直、他の仕事に対してあまり興味が持てませんでした。その中で唯一『楽しそうだな』と思ったのがアソボウズです。誘っていただいたことも大きかったですが、多分僕は野球が大好きだったんです」

“好き”という気持ちと、アルバイトで実際に経験して感じた“やりがい”が決め手となり、大学卒業後、アソボウズに入社。プロ野球データの分析・入力を行うデータアナリストとしての道を歩み始めた。
ビジネススキルを身につけるため
全てを捨てて転職
2009年に行われた第2回WBCに分析要員兼営業担当としてチームに帯同していた星川さん。しかし、スポーツとは全く異なる業種に進むことを決めた
入社後は、アルバイト時代と同様にプロ野球の試合のデータ入力・分析を5年間担当。その後は営業部に移り、各種メディア向けのスポーツデータ配信の営業を2年間、そして野球・サッカー・ラグビーのプロチームに向けたコンサルティング業務を3年間行った。

プロ野球のチーム戦略にも携わるようになった星川さんは、2009年に行われた第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも、分析要員兼営業担当としてチームに帯同していたという。

「プロ野球の各球団と仕事をしていたこともあり、ありがたいことに侍ジャパンでも業務を任せていただきました。大会が開催される1年前に始動し、各大陸で行われる予選の映像を集め、それをデータベース化し、代表チームの選手や首脳陣に渡していました。もちろん本戦が始まってからも各試合を分析して、データをどんどんアップデートさせなければいけないので、ほとんど眠れませんでした。そういう苦しい日々がずっと続いていたこともあり、チームが世界一になった瞬間はベンチにいましたが本当に感動しましたね」

しかし同年、星川さんはデータスタジアムを退職し、自動車や電子・電気機器などの金型部品を主に扱う金型部品事業を行うミスミに転職。なぜ野球から離れ、今までとは全く異なる業種に進むことを決めたのだろうか。

「プロ野球の球団で働くという選択肢もありましたが、なにしろ世界一を経験したので(笑)。もちろん実際に優勝したのは選手たちですし、アナリストとしての貢献度はあまりないと、僕は思っています。ですが、このまま野球に関わる仕事を続けていても、これ以上の経験や感動を得ることは難しいかな、と。

それに『野球界をもっと良くしたい』と考えた場合、野球界のことしか分からないようでは新しいものを取り入れることができず、結局何も変えられないじゃないですか。たとえアナリストとして活動しても、アナリスト目線でしか野球界を見ることができない。僕としては、正直別の形で、野球界のマーケットを大きくする、新しいビジネスを作り上げる役割として野球と関わりたかった。

だから野球とは全く違う、過去の経験が全く生きない経営やビジネスをイチから学べる会社に転職することを決めました。転職エージェントにもお願いして、いろいろと探した結果、ミスミに辿り着いたというわけです。給料が下がって平社員でいいから入れて欲しいとお願いしました」

ミスミでは、商品企画から製造物流、販売までの“モノづくり”における全工程を担当。工場の中で使われる配線部品の製造や、仕入れ、市場調査など、全ての業務内容を挙げたらキリがないほど、多くの仕事を経験した。同社に4年間在籍し、その後、現在代表を務めるリバー・スターを立ち上げた。しかし、事業内容はまったく決まっていなかったという。

「実はミスミに入社する前から、自身で会社を設立したいと思っていました。だから、様々な仕事を学びたいと決め、遮二無二働きましたね。しかし、独立して何をやるかは、働いている間に決めようと思っていたんですが、ハードすぎて考える余裕が全くありませんでした(笑)。だから退職してからも事業内容を決められずにいました。

ですがある時、プロ野球データの販売やコンサルティング事業を行うDELTAにいる知り合いから“トラックマンの代理店として仕事をやりませんか?”というお誘いをいただきました。それまで何も決まっていなかったですし、その仕事自体も面白そうだと思い、今に至ります。このように唐突に始まったわけですが、データアナリストでの経験とミスミで培った経営戦略は、どちらも今の事業に活きています」

トラックマンとは、デンマークのTRACKMAN社が開発した弾道測定機器。メジャーリーグの全30球団では、日本球界が導入する以前から用いられており、楽天ゴールデンイーグルスがその事例をもとに同社と契約。2014年から導入した。

星川さんはプロ野球の各球団と交渉し、当時はまだ前例が少なかった国内で、同機を導入する流れを作っていった。(前編終わり)


(プロフィール)
星川太輔(ほしかわ・だいすけ)
1976年生まれ、東京都出身。慶応義塾大学進学後、卒業後は株式会社アソボウズ(現データスタジアム株式会社)に入社し、データアナリスト、プロスポーツチーム向けコンサルティング事業を担当。2009年の第2回WBCではデータ分析担当としてチーム帯同し侍ジャパンの優勝にも貢献。同年にデータスタジアムを退社後、商社(株式会社ミスミ)での勤務を経て株式会社リバー・スターを設立し代表取締役に就任。トラックマンの野球部門責任者を務める他、野球の普及活動にも取り組んでいる。

※2021年5月20日時点
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