Home > 特集・連載 > 【アスリートのデュアルキャリア】 アメリカンフットボール選手 中村輝晃クラークさん「競技生活だけでは得られない、より“ビジネスに特化した経験”を積むことができます」(後編)

2019年8月29日19時48分

【アスリートのデュアルキャリア】 アメリカンフットボール選手 中村輝晃クラークさん「競技生活だけでは得られない、より“ビジネスに特化した経験”を積むことができます」(後編)

  • LINEで送る
アメリカンフットボール選手、中村輝晃クラークさんに話を聞きました


アメリカンフットボール(以下、アメフト)選手として活躍しながら、富士通で働いている中村輝晃クラークさん。日本大学卒業後、同社の社会人チーム『富士通フロンティアーズ』のワイドレシーバー(WR)として、8年間で7度Xリーグ(日本社会人アメリカンフットボールリーグ)の決勝に進出。うち4度の優勝とリーグ年間優秀選手にも選出。2017年シーズンの決勝では、19年ぶりとなるレシービングヤード記録を更新しMVPに輝いた。今回は、そんな彼に現在に至るまでの競技人生を振り返ってもらいながら、どのようなデュアルキャリアを実践しているのかを聞いた。

取材・文/佐藤主祥
企業チーム・社員選手に必要な
『職場からの信頼』
『富士通フロンティアーズ』のワイドレシーバー(WR)として、Xリーグを4度優勝
2011年から、富士通で働きながら、同社が所有する社会人アメフトチーム『富士通フロンティアーズ』でプレーしている中村さん。入社して3年半が経ったころ、宣伝部からグローバルマーケティング本部ジャパンマーケティング統括部カスタマーリレーション部に異動となった。

仕事の内容は、ユーザー団体『FUJITSUファミリ会』の活動に取り組んでいる。ファミリ会は、会員数約4200の企業・団体ユーザーで構成している国内最大のICTユーザー団体として、会員企業と富士通双方にとり、価値のある情報交換や交流機会を提供。持続的な関係構築に大きく寄与することを目的としている。

その中で、講演やセミナーに登壇する講師や会場の手配、集客などを担当。そういったイベントや交流行事にスタッフとして参加している中村さんだが、企業チームに在籍しているからこその出来事が、その場では起こると話す。

「私がイベントにいると、周りから“富士通フロンティアーズの選手だ!”“一緒に写真撮ってください”って声をかけていただくことがあります。というのも、開催するイベントは、富士通のお客様がいらっしゃるんですけど、その方々ってアメフトの試合を観に来てくださる方が多いんですよ。これだけ応援してくださっている方がいるんだなと、いつも感じています。これは、会社内の仕事とスポーツを両方行っている企業チームならではの出来事だと思いますね」

それだけではなく、富士通グループに勤める約12万人の従業員全てが、富士通フロンティアーズの応援団。いつも一緒に働いている社員たちは、仕事仲間であると同時に、選手たちの“ファン”でもある。だからこそ、職場で信頼を得ることの大切さを身にしみて感じている。

「富士通では、アメフトを全力でやれる環境が用意されています。ただ、それに甘えてしまっては迷惑をかけてしまうので、自分の業務はしっかり責任を持って遂行することを心がけています。

また、私自身が人と喋るのが好きというのもありますが、職場の同僚としっかりコミュニケーションを取ることも意識しています。そのおかげで仲も深まったり、時にはプライベートでのお付き合いをする人もいます。自分が困った時に助けてくれたり、逆に頼られたりした時は嬉しいですね。それくらい周りとはすごく仲が良くて(笑)。それが、社内からも応援してくれる理由の一つだとも思います」

‐働く仲間と良い人間関係を築く‐

職場でも一つの“チーム”として活動し、周囲に溶け込んでいるからこそ、多くの人から応援してもらえる、そんな存在になっている。
デュアルキャリアは
社会人として大きく成長できる
”仕事と競技の両立はメリットしかない”と話す中村さん
富士通で仕事と競技を両立している中村さん。実は新しい分野にも興味を持っている。SNSでの活動の発信のほか、各ウェブ媒体でのインタビュー取材や渋谷クロスFMの『東京☆VOICe』、FMサルースの『SALUS all in one』といった多数のラジオ番組に出演するなど、自ら発信する機会を増やしている。こういった様々な活動を行う、真意は何なのだろうか。

「“個人の価値を上げる”というのもそうですが、最終的にはアメフトの普及、ならびに日本のスポーツ界をさらに盛り上げていきたいと思っています。高校から今まで15年間アメフトを続けてきましたが、アメフトには多様な要素が詰まっていて、それぞれの個の強みを活かすことの出来る本当に魅力的なスポーツなんです。その気持ちはずっと変わりませんし、この面白さをもっと多くの人に知ってもらいたい。だから、いろんなメディアに出たり自ら発信することで、少しでも興味を持ってもらえればと思います」

こういった活動には、競技普及と同時に“悪いイメージを払拭したい”という意図がある。昨年5月に行われた、日本大学と関西学院大学との定期戦で起こった『悪質タックル事件』。この問題は、今でもアメフト界にとって大きな痛手となっている。日本大学OBである中村さんは、アメフト選手を代表して競技を良いイメージに改善したいと、力強く話す。

「やはりOBとしてはショックな事件でしたが、それ以上に、世間に“アメフトは危険なスポーツ”というイメージがついてしまったことが悔しいんです。確かに危険な部分があるのは否定できませんが、その分ルールはすごく厳しく、怪我をしないように作られています。だから少しでもいいので、アメフトをやってみてほしいし、観てほしい。ボールを手に取り、投げて、蹴って、走ってみてほしい。それを伝えることも、活動の目的の一つです」

競技人口の問題はあるが、日本のアメフトは決して弱くはない。1999年から4年に1度開催されている『アメリカンフットボール・ワールドカップ(現、IFAFアメリカンフットボール世界選手権)』では、第1回および第2回大会はいずれも日本代表が優勝。2007年、2015年大会でも決勝まで勝ち上がっている。アマチュア主体のチーム構成であるため、アメリカ代表はNFLに所属するプロ選手は出場していないが、それでも日本代表チームは各強豪国と長年に渡って互角の戦いを繰り広げている。

そんな中、2024年パリ五輪での追加種目として、アメフトを提案するのではないかと報道がされている。さらにその4年後には、本場アメリカのロサンゼルスで五輪が開催されるため、立て続けに五輪競技として行われる可能性がある。

「日本ではアメフトはまだまだマイナーなので、競技人口は少ない。だからこそ子供たちは今からアメフトを始めれば、日本代表になれる可能性が高まり、5年後、あるいは9年後には五輪の舞台でメダルにチャレンジすることができるかもしれないので、ぜひ挑戦してほしい。そして、そのお手伝いができればと考えています」

マイナースポーツでは日の丸を背負う選手でも、アルバイトで生計を立てている人も少なくない。したがって、プロリーグがないアメフトに挑戦することに対して、不安を抱く人もいるだろう。しかし“仕事と競技の両立は、むしろメリットしかない”と話す。

「富士通という企業に所属させてもらっているので、しっかりとした生活の保証はありますし、何より職場の方々のサポートが素晴らしく、たくさんの人に応援してもらえる。こうした環境は本当に大きいなと、8年勤めさせていただいてすごく感じています。

加えて、様々な社会経験ができるということも魅力です。プロ生活だけでは得られない、よりビジネスに特化した経験を積むことができますから。そういう世界で過ごすことは、アスリートとしても社会人としても成長していくことにつながるし、現役を終えた後も必ず活きると信じています」

仕事と競技の2つの“フィールド”を駆け回る中村さん。自身をきちんとマネジメントしながら、未来に向けて進化を続けている。


(プロフィール)
中村輝晃クラーク(なかむら・てるあき)
1988年9月生まれ、フランス出身。11歳までフランスで過ごし、空手・サッカーや乗馬など様々なスポーツに挑戦。日本に帰国後は、高校入学と同時にアメリカンフットボールに出会う。日本大学を卒業後、富士通に入社。正社員として働く中、アメリカンフットボールチーム『富士通フロンティアーズ』に所属。Xリーグ4度の優勝に貢献している。

※データは2019年8月29日時点
  • LINEで送る
  • sports japan GATHER キャリア支援サービス