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2019年8月9日18時56分

「個人の”体質情報”に合わせた最適なアドバイスをしていきたい」業務用遺伝子分析サービス業 斎藤利さん(前編)

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知りたい!就きたい!スポーツの仕事
連載21回目〜業務用遺伝子分析サービス業編〜
グリスタ代表取締役の斎藤さんに話を聞いた


2020東京五輪に向け「スポーツ業界で働きたい!」と思っている学生や転職を希望している人が多くなる中、どんな職種があるの?どんなスキルが必要なのか?など分からないことが数あり、仕事の実際を知ることが意思決定には重要となる。そこで、スポーツを仕事としている人にインタビューし、仕事の“あれこれ”を聞く。

株式会社グリスタ 代表取締役
名前:斎藤利(さいとう・ちから)さん
職業歴:2014年〜

仕事内容
・業務用遺伝子分析サービス事業
・業務用遺伝子分析サービス導入のサポート
・バレーボール個人スクール事業
・トレーニングコンサルティング事業

取材・文/佐藤主祥
競技経験を活かせる場所を作りたい
バレーボール教室を開講した理由
スポーツにおけるパフォーマンス向上を目指すにあたり、年々注目が高まっている『遺伝子サービス』。自分の生まれ持った体質を知った上で食事やトレーニングを行うことにより、効果的に課題を解決することを期待されている。

そんなスポーツ界において、現在、急激に知名度を伸ばしているのが、グリスタが運営する日本初の業務用遺伝子分析サービス『IDENSIL(イデンシル)』。2018年4月に提供を開始したばかりだが、約1年で出荷個数が当初の目標値の149パーセントとなり、驚異的な速度で成長を続けている。

実際にプロ体操選手の内村航平や女子サッカー選手の永里優季、バドミントン女子日本代表の奥原希望ら各競技のトップアスリートが活用。そんなIDENSILを開発したグリスタの代表取締役・斎藤利さんだが、はじめから遺伝子業界への参入を試みていたわけではない。

学生時代はバレーボール部に所属していたこともあり、2010年5月には、日本初となる個人指導専門スクール『東京バレーボールアカデミー』を開講。競技の普及・発展に勤しんでいた。

「スクール事業を始めたきっかけは、バレーボールのコーチが、選手たちやこれから競技を始める子供たちの憧れの職業になればいいな、という想いがあったからです。実際にスポーツ業界に参入して改めて感じたのですが、やはりスポーツの仕事でお金を稼ぐことは難しい。

だからこそ、この事業を成功させて、バレーボールで学生時代、あるいはプロとして頑張ってきた人たちに、その競技のキャリアを活かせる場所を作ってあげたかった。バレーボールにずっと携わってきた身としては、どうにかして『スポーツ業界を盛り上げたい』という強い気持ちがありましたから」

実際に、引退後のセカンドキャリアとして就職を希望したVリーグの選手もいたという。実績としても、2013年7月には受講生の数が1万人に達し、2015年3月には2万人を突破。現在では4万人を超え、各メディアで取り上げられる機会も増えている。その理由について、斎藤さんはこう語った。

「私は競技歴があるといっても、バレーボールは下手だったんです。だから例えば、スパイクが手に当たらない人の気持ちがよく分かります(笑)。競技力がなかなか向上しない人、初心者の人でも気兼ねなく参加できる。加えて、少人数制の個人レッスンですから、一人に対して多くの時間を費やすことができる。それが当スクールの最大の強みです。

だから開講当初は、体験レッスンを受けた方の入会率は98パーセントと、かなりの確率で通っていただいていました。ただ、本当は『自分みたいな下手な人間が教えていいのだろうか』という疑問や不安を抱えていましたが、上達しない人の気持ちが分かる自分だからこそ、受講生はレッスンを受けに来てくださった。うまくいかないことも多々ありましたが、それは事業をする上で本当に励みになりましたね」
健康増進やパフォーマンスの向上へ導く
業務用遺伝子分析サービス『IDENSIL』
『アスリート』『ヘルスケア』『シェイプ&ビューティー』と3つのサービステンプレート(ベーシック版)を用意
日本では唯一の個人指導専門スクールとして人気を博していった東京バレーボールアカデミー。開講以降、多くの受講生と向き合い指導していった斎藤さんだが、ある時から、スポーツにおける個人の身体的能力について考え始めていた。

「当スクールは、個人にフォーカスして指導していくスタイルです。その受講生がどれぐらいの技術や能力を持っているのか、なんとなく分かってきます。その中で“個”の力を引き出し、伸ばしていくためには『もっと受講生一人ひとりの身体の特性を知るべきではないか』と思い。じゃあどうすればいいかと考え、模索していくと“遺伝子”というキーワードが出てきたんです」

遺伝情報伝達物質であるDNAの配列の違いを分析し、遺伝的な違いや体質を明らかにすることができれば、受講生だけじゃなく、全てのアスリート、そして広く一般の方々においても個人の体質に合ったトレーニングが可能となる。そう考えた斎藤さんは、2015年3月、体が太る仕組みや効果的なトレーニング方法が分かる『フィジカル遺伝子分析サービス』をリリース。それに伴い、遺伝子業界への参入を果たした。

しかし、ある2人の遺伝学者との出会いで、斎藤さんの方向性は一気に変わっていく。

「2017年ぐらいに、スポーツ遺伝学の第一人者である福典之先生と、行動遺伝学を専門とする山元大輔氏とお話する機会があり、この業界に関わる様々な情報を教えていただくことができました。特に福先生は、スポーツ遺伝学の分野では唯一無二の方、2人の知見やノウハウを学ばせていただき、いくつか『フィジカル遺伝子分析サービス』の問題点が見つかったんです。

そして“一般消費者向け(小売用)のフィジカル遺伝子とは異なる、新たにプロフェッショナルに向けた遺伝子キット(業務用)の開発を行い普及させていきたいので、お力添えいただけませんか?”とお願いし、協力いただけることになりました。そこから約1年、しっかりとエビデンスをとりながら開発し、2018年4月に業務用遺伝子分析サービス『IDENSIL』を発表することができました」

IDENSILは、正しい情報・結果を元に、スポーツやダイエット、健康などさまざまな目的に合わせた最適な分析項目と最新のエビデンスを活用した遺伝子分析サービス。二人の先生や医師などの監修により、科学的に根拠のあるレポーティングを行うことが可能となった。

サービスのテンプレート(ベーシック版)としては以下の3つがある。

・アスリート版
自分の生まれ持った体質を知った上で食事・運動を行うことで、競技でのパフォーマンス向上・ケガの予防などに活用

・ヘルスケア版
運動機能に対する体質や、積極的に摂るべき(吸収が苦手な)栄養素などを知った上で食事・運動を行うことで、健康促進や介護予防などに活用

・シェイプ&ビューティー版
肌老化や紫外線影響、体脂肪などの体質に合わせて化粧品の選択・食事(ダイエット)・運動を行うことで、美容やエイジング対策・コンディショニングに活用

また、小売向けではなく“業務用に特化”したことも同サービスの大きな特徴の1つだ。

「弊社では小売・通販は一切行っておりません。というのも、我々が提供するのはあくまで“体質情報”。IDENSILは、企業様が提供するサービス(トレーニングや食事)と組み合わせて、一人ひとりの体質に合わせたサービスを届けるための遺伝子分析です。そのため通販などで検査キッドを売るのではなく、弊社で開催している導入検討者向けの研修会を受け、『IDENSILを正しく使っていただける』と判断した企業などに提供しています」

とはいえ、導入するのは決して難しいことではない。グリスタは東京で月2回、地方でも定期的に研修会を開催しているが、企業によっては1度の研修で、ある程度使いこなせるようになるという。

それによって、導入した企業はIDENSILを自社サービスに合わせた内容へと応用することが可能。目的に合わせて遺伝子項目を選定したり、店舗独自のトレーニングメニューを組み合わせてカスタマイズしたりと“自社のオリジナルコンテンツ”としてサービスを提供することができるのだ。

日本初となる個人指導専門スクール開講から、再び前例のない“業務用”の遺伝子検査サービスを生み出した斎藤さん。その類い稀な創造性と、変わることのない『スポーツ業界を盛り上げたい』という想いを胸に、また新たな挑戦が始まった。(前編終わり)


(プロフィール)
斎藤利(さいとう・ちから)さん
2010年、日本で初めてのバレーボール個人指導専門スクール「東京バレーボールアカデミー」を設立。スクール独自の上達用サポーターなども開発 し、現在の指導実績は4万人を超えるスクールへと成長。2014年に遺伝子事業を開始。主にスポーツ・フィットネス向けにサービスを提供。2017年6月には、一般社団法人ライフスタイルスポーツ協会から株式会社グリスタへ当該事業を移管。2018年IDENSILを開発。現在ではIDENSILを通じ、日本を代表するプロアスリートやオリンピアンに向け、体質に合わせた食事やトレーニングに取り組むことが出来る環境を提供。代表取締役社長を務める。HP:グリスタ

※データは2019年8月9日時点
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