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2019年5月8日13時57分

「仕事が競技に、競技が仕事に、それぞれに活かされています」アスリートのデュアルキャリア アルティメット選手 田村友絵さん(後編)

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7人制フライングディスク競技『アルティメット』のプレーヤー田村友絵さんに話を聞いた


7人制フライングディスク競技『アルティメット』の日本を代表するプレーヤーとして、世界を相手に戦っている田村友絵さん。そんな彼女も、大学卒業後、一度は競技から離れたことがある。しかし、アルティメットとの縁はそれで切れはしなかった。今では“世界の強豪に勝つこと”を最大の目標に、仕事を行いながらストイックに競技と向き合っている。どのようなデュアルキャリア生活なのか、話を聞いた。

田村友絵さん記事前編

取材・文/斎藤寿子

敗退から芽生えた『世界に勝つこと』
アルティメットという競技の奥深さを知った田村さん。2016年、今度は自らの意思でA代表選考会に臨んだ。そして、選出を果たし代表活動をスタート。モチベーションは、大学4年生の時とはまったく違うものとなっていた。

「大学の時は、確かにA代表の選考に残っていましたが、恐らく、戦力として必要とされている選手ではありませんでした。”将来のために経験を積ませよう”みたいな感じだったんじゃないかなと思います。でも、今回の選出では、自分の力を必要としてくれている。貢献できることがあると思えたので、A代表として頑張りたいと思いました」

その年、A代表としては初の国際大会となった世界選手権に出場。日本は自国開催だった2012年の前回大会で優勝し、世界チャンピオンとなっていた。その時の監督が続投し、また選手の中にも優勝メンバーが残っていた。そのため、日本としては当然、連覇するつもりで臨んだ大会だった。田村さんも本気で優勝できると信じて疑わなかった。

ところが、日本は準決勝でコロンビアに敗退。さらに3位決定戦でもカナダに完敗を喫した。表彰台に上がることさえできなかった結果に、それまでに味わったことのないほどの悔しさがわいてきた。そして、その時の悔しさが、生来の負けず嫌いの性格に火をつけ、『世界に勝つこと』を目標にするきっかけとなった。

アルティメット界の主な世界タイトルは、世界選手権のほか、ワールドゲームズ、そしてクラブの世界チャンピオンを決めるクラブ選手権の3つ。いずれも4年に一度の大会だ。

その中で、最も名誉あるタイトルとされているのが『ワールドゲームズ』。実は、約40カ国が出場できる世界選手権に比べて、ワールドゲームズは世界のトップ4 と開催国のみが出場を許される“狭き門”。さらに、各国から選抜されるのは男女7人ずつと、最大28人をエントリーできる世界選手権とは人数も少ない。だからこそ、出場するだけでも誇れる大会なのだ。

日本は世界の中でも有数の強豪国で、これまでワールドゲームズには毎回出場している。田村さんは、2017年に初めてワールドゲームズのA代表に選出され『ミックス』のカテゴリーで出場 。5チーム中4位という成績だったが、直前でメンバー編成に変更があるなど、厳しい状況の中、開催国のポーランドから勝利を挙げたことは一つの成果だと感じている。とはいえ、もちろん満足はできなかった。

「本当にあっという間で、いつの間にか終わっていました。出場国が限られたハイレベルな大会なので、死闘が毎試合続く感じ。世界選手権やクラブ選手権とは、疲れがまったく違いました。だから正直、ほとんど試合中の記憶がないんです」

2016年世界選手権、2017年ワールドゲームズと、田村さんは代表となって以降、一度も表彰台に上がっていない。だからこそ、2020年の世界選手権、2021年のワールドゲームズに懸ける想いは強い。そして、約1年後に迫った世界選手権の代表選考は、もうすでに始まっている。
『二足のわらじ』から生まれる相乗効果
仕事と競技を両立する田村さん。その理由とは?
代表活動を続けるためには、やはり所属する企業からの理解も必須となる。幸運なことに、田村さんが働いている企業は、例えば日本代表の合宿や遠征がある場合は、長期休暇を取得できるなど、全面的にバックアップ。また、国内大会には自前のうちわを手に応援に駆け付けてくれる上司や同僚もおり、恵まれた環境で競技を続けている。

通常、田村さんは平日9時から18時まで勤務し、終業後に練習会に参加したり、ジムでのトレーニングに励む。帰宅は22時を過ぎることがほとんどだ。しかし、当然だが、どんなに練習で疲れていても、仕事は一切手を抜くことはない。普段は、何より仕事を優先している。それは、仕事と競技の『二足のわらじ』生活がベストだと考えているからだ。

「確かに、競技だけに専念できる環境はいいなと思うこともあります。でも、私はやっぱり仕事もしていたいなと思います。仕事が競技に、競技が仕事に、それぞれ活かされていることがあるので。例えば、私は営業補助をやっているのですが、1人で十数名の営業についているんです。そうすると、それぞれの人の状況を把握するためには、アンテナを広く張っていなければいけません。それが競技の上では、チームメイト一人一人を見て、まとめる力になっています」

競技だけを行う“アスリート契約”ではなく、自ら仕事と競技の両立を選んだ田村さん。仕事を続けていても“世界を目指せる!”。アルティメット界だけではなく、様々なスポーツをしている人の道しるべとなっていってほしい。


(プロフィール)
田村友絵(たむら・ともえ)
1990年3月生まれ、東京都出身。成蹊大学に入学後アルティメットを開始。ポジションはハンドラーまたはミドル。主に「ハンドラー」と呼ばれるポジションを務め、パスをたくさん集めてハンドリング(処理)しながらゲームを組み立てる、いわばチームの司令塔としての役割を担っている。2016年WUGC世界アルティメット&ガッツ選手権大会日本代表ウィメン部門4位。2017年、第10回ワールドゲームズ日本代表疾風JAPAN(男女混合)で5位。平日は健康製品などを扱う企業に勤め、その後自主練習。土日にチーム練習を行う。MUD(マッド)所属。

※データは2019年5月8日時点
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