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2019年3月18日15時38分

産業機械メーカーの『ヤンマー』が 女子サッカーのキャリアサポートを開始した理由とは?【後編】

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ヤンマーホールディングス人事部部長の神原清孝さんに話を聞いた


日本代表する産業機械メーカーのヤンマーが2018年度、新しい取り組みをスタートさせた。同社がスポンサードする女子サッカークラブ『セレッソ大阪堺レディース』(以下、堺レディース)は2012年に創設され、高校生、大学生を中心とするメンバー26人が所属(2018年12月現在)。チームの大学生2人をヤンマーのトライアルインターン生として2018年8月に迎え、1週間の就業体験の場を提供。

アスリートの『セカンドキャリア』や『デュアルキャリア』が叫ばれる中、不足している女子サッカー選手のキャリアサポートが最大の目的。果たして、実際インターン生を受け入れたことによる効果はどのように表れたのか。ヤンマーホールディングス人事部部長の神原清孝さんにインタビューをした。

ヤンマー記事前編

取材・文/斎藤寿子

「人を大切にする」=「キャリアサポート」
では、なぜヤンマーはサッカーというスポーツを支援し、重視しているのだろうか。その背景には、企業の風土といえる特色がある。

まだ、日本のサッカー界にプロリーグ(Jリーグ)がなかった時代、ヤンマー社内にはサッカー部(ヤンマーディーゼルサッカー部)があった。日本リーグで優勝経験もある同部を母体に発足したのが、現在のセレッソ大阪だ。

そして、当時サッカー部の総監督を務めたのが、同社グループの中核企業である神崎高級工機製作所、元社長の山岡浩二郎氏(故人)。海外進出や事業拡大を目指すうえで不可欠な『組織性』『グローバル性』を持つスポーツとしてサッカーに狙いを定めた山岡氏は、サッカークラブを運営することで“個の集まりの中でどう力を発揮するか”というサッカー型組織を作り出そうとした。それが、現在も脈々と受け継がれている。

「弊社にとって初めての海外拠点はブラジルだったのですが、言葉も文化も全く違う海外の社員と何か共通したものがあった方がいいのでは、ということで提案されたのがサッカーでした。サッカー大国であるブラジルということもあり、コミュニケーションツールとして用いられたんです。それがきっかけとなり、社内にサッカー部が創設されました。目標とするゴールを共有しながら、そこに辿りつくまでの過程は自由で、それぞれの特徴を活かす。そんなサッカーと同様の『個』を大切にした自律型経営を目指してきたのが、ヤンマーの歴史です」
社内サッカーイベント『ヤンマーグローバルカップ』の様子。世界各地のヤンマーグループの社員で構成したチームが参加
実は、ヤンマーでは社内サッカーイベント『ヤンマーグローバルカップ』が開催されている。その名の通り国際的イベントである同カップには、世界各地のヤンマーグループの社員で構成したチームが参加する。各大陸に予選があり、勝ち上がった10チームほどが大陸の代表として参加することができるという、まるでワールドカップのような仕組みだ。

世界各地から10チームほどが集結して行われる本戦では、1日目に予選が行われ、2日目の決勝はセレッソ大阪の本拠地である『キンチョウスタジアム』(「桜スタジアム」として2021年の完成を目指し、2019年に着工)で行われる。15年から始まり、17年は5月に行われ、日本本社チームが優勝。第3回となる今年は初めて日本以外の国、タイで行われる予定だ。
インターン制度は
サッカーをビジネスに応用させた組織づくりの一環
今年度初めて実施された堺レディース選手のインターン制度は、そんなサッカーをビジネスに応用させた組織づくりの一環といえる。来年度以降も続けていく方針で、選手側が志望すれば一般の学生と同様に入社試験を経て採用する意向もあるという。しかし、これまでアスリート契約をした社員は皆無という同社だが、練習時間や遠征などによる影響がある選手の勤務体制はどうするのだろうか。神原さんは、

「練習時間を確保するためには、時短勤務の体制も考えなければいけないと思っています。また、土日が試合で月曜から金曜が勤務となれば、休日がなくなってしまいますので、何かしらの配慮が必要でしょう。そのあたりは、実際に入社する時に、きちんと選手とも話し合った中で考えていきたいと思っています。こうした課題はたくさん出てくるとは思いますが、それでもプラスとなる要素の方が大きいかなと。今回のインターン制度実施で、そう実感しています」

もともとセレッソ大阪(Jリーグ)は、育成型チームとして創設し、ジュニア世代から育てることを重視してきた。それはレディースも同じ。その背景には、ヤンマーという企業自体が『人を大切にする企業』を目指してきたことがある。今回のインターン制度は、その一つ。今後は、女子サッカー選手のデュアルキャリア、セカンドキャリアにも寄与していく意向だ。

※データは2019年3月18日時点

※スポーツ庁委託事業「スポーツキャリアサポート戦略における{アスリートと企業等とのマッチング支援}」の取材にご協力いただきました。
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