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2019年2月8日12時58分

元アスリートが語るスポーツの仕事「やる」から「つくる」へ-Vol.14- 元バスケットボール選手 伊藤俊亮さん(後編)

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「日本のバスケットボールに“観戦文化”を根付かせたい」
元バスケットボール選手、伊藤俊亮さんに話を聞いた


〜第14回目〜
伊藤俊亮(いとう・しゅんすけ)さん/39歳
バスケットボール選手→千葉ジェッツふなばし事業部長

取材・文/佐藤主祥

伊藤俊亮さん記事前編

SNSの活用が
“ファン獲得&活性化”につながる
16シーズンという長きに渡ってコートに立ち続けた“イートン”こと伊藤俊亮さん。2017-18シーズン終了後に引退し、現在は最後にプレーしていた千葉ジェッツふなばし(以下、千葉ジェッツ)の事業部長に就任し、営業マンとして日々奔走している。

活動内容としては法人営業がメインだが、他に広報・MD・デザインといった役割も担っており、SNSを活用したPRも行っている。伊藤さんは、現役時代からツイッターを駆使し、ブースター(ファン)との交流を大切にしてきた選手。実際に2017-18シーズンの「ソーシャルメディアリーダー」に選ばれるほど、SNSで大きな影響を生み出しており、フロント側に回った現在も自身のアカウントによるツイートを継続している。

「今は非常に忙しくてツイートする頻度がガクッと落ちています(笑)。それでもブースターのみなさんは温かくも見守ってくださっていて、試合に関するツイートにもたくさんの“リプライ”や“いいね”が寄せられます。試合会場でも声をかけてくださいますし、ブースターの方とは現場やSNSを通じて、現役時代と変わらず良好なコミュニケーションは取れています」

引退してもブースターから愛され続ける伊藤さん。やはり、現役時代からSNSによる発信をしていた影響が大きいと話す。

「実際のプレーでもですが、ウェブからも自分のキャラクター作りをしていくのは非常に効果的だと思うんです。というのも、SNSだと自分の声や気持ちがずっと文字として残るので、僕という1人の人間を理解してもらえますし、それに対して常に双方でコミュニケーションが取れる状態にあるので、『これを活用しない手はない!』と思うぐらい価値が高いと感じています。多くの方と直接やり取りをすることで、SNSからファンを獲得することができますし、僕自身、選手人生を終えた後でも変わらずに応援してもらっています」

インターネットが普及していない時代では、選手とこれだけ気軽に交流できる機会は考えられなかった。しかし現在は、SNSを通じてファンは選手に声援を直接届けられるようになり、選手とファンの距離がこれまで以上に近づいた。それによって千葉ジェッツの試合には、地元だけでなく、全国から多くのブースターが詰めかけるようになったという。

「試合においても、実際に“九州から来ました”とか“北海道から行きます”というリプライをいただくことがあり、全国各地からホームである船橋アリーナに足を運んでくれるブースターが増えました。SNS上でならどれだけ遠くに住んでいても直接コミュニケーションが取れ、身近に感じてくれるので、遠方のブースターも『よし応援に行こう!』と、行動に移してくれます。競技に限らず、仕事というのは支えてくれるファンあってのことだと思うので、引き続きSNS上で交流を続けていきたいです」
現役時代から
何でも挑戦する姿勢を貫き通す
昨年行われたBリーグ開幕戦。5つのキャラクター(モッパー、郵便局員、解説者、グッズ販売員、マスク・ド・オッチー)に扮して会場を盛り上げた
伊藤さんは、2018年10月4日に行われたBリーグ開幕戦のパフォーマンスの中で、フロントスタッフとして大きな役割を果たした。当日は、千葉ジェッツとパートナー契約を結んでいるミクシィの「XFLAGスタジオ」(以下、XFLAG)の冠試合「XFLAG DAY」として開催。そのエンターテイメントの1つのコンテンツとして、5つのキャラクター(モッパー、郵便局員、解説者、グッズ販売員、マスク・ド・オッチー)に扮し会場を盛り上げる“イートン5”という企画を1人でやり切った。

「開幕戦は『何でもやります!』といったところ、出来上がった台本を見たらこのような演出になっていました(笑)。コートをモップがけしたり、郵便局員として自転車に乗ったりと、全てが新しい挑戦だったので、もうがむしゃらに取り組みましたね。でも、色々な経験ができましたし、試合後にはブースターから“よかったよ!お疲れ様!”と声がけいただけたので、本当に嬉しかったです」

この試合で初めて選手ではなく運営側として携わった伊藤さん。外から見る景色というのは、本人の目からはどのように映ったのだろうか。

「仕事ではありますが、コートに立った瞬間、特別な感覚がありました。僕は引退したばかりなので、ほとんどのブースターからは選手として見られている感じでした。だからユニホームは脱いでも、まだ観客席から“イートン!”って大きな歓声をもらえたので、なんか得した気分にもなりましたね(笑)。このXFLAGさんの冠試合に関しては、半分は演者のような立ち位置ではあったんですが、運営サイドとしてゲームに関われた、という意味ではようやくスタートを切れた感じがします。営業もそうですけど、今後もこうした仕事をしていくことでチームの魅力を伝え、価値を上げていくことに貢献できるので、こういった企画にも再度挑戦していきたいです」
2018年10月29日には、船橋税務署の広報大使に就き、同税務署が行う各種PR活動に協力。11月15日には『バスケットLIVE』のトーク特番『イートン&FukaのジェッツだZ!』に出演するなど、まさに“フロント”として最前線での活躍を見せている。こうして活動の幅を広げながら、着実にその地位を築き上げている伊藤さん。その経験から、セカンドキャリアを考える上で必要なことは何なのだろうか。

「まずはいろんなことに興味を持つこと。そして、興味を持ったことに対して挑戦できるチャンスが目の前にきた時、絶対に掴み取るという姿勢を持ち続けるべきだと思います。その挑戦が、今後どのようなことに繋がるかは分からなくても、とりあえず一つの経験・スキルとして離さずに持っておいてください。いずれ、それが活きる場面や仕事に出くわすかもしれません。だから“これは自分の人生では必要じゃないな“と最初から決めつけるのではなく、取れるものは全て取っておいて、後々使えるタイミングを待つ、という考え方でいてほしいと思いますね」

アスリートにおけるセカンドキャリアは、必ずしもその競技に携われるとは限らない。だからこそ、さまざまな経験・スキルを現役時代から身につけておくべきだと、伊藤さんは考える。そして最後に、自身が描くバスケットボール界の未来について聞いてみた。

「フロントスタッフとしては、このBリーグや千葉ジェッツというチームが100年続くように尽力していきたいです。そのために、せめて10〜20年後にはバスケットボールを“観るスポーツ”として定着させなければいけません。家族で週末の数時間をどこで過ごそうと考えた時に、その選択肢の一つとして選んでもらうには、コンテンツとしてはまだ弱いと思うので。施策として例えば、今回の『XFLAG DAY』の取り組みの中で、会場に足を運べない方に向けて実施した、イオンモール幕張新都心と柏でのパブリックビューイングみたいなこととか。そういった試合を観て楽しめる企画を今後たくさん生み出して、バスケットボールにおける“観戦文化”を根付かせていきたいと思っています」

バスケットボールを「する」競技者から、観戦する文化を「つくる」フロント側に回った伊藤さん。これから起こる出来事一つ一つが、日本のバスケットボール界発展へつながっていく。
(プロフィール)
伊藤俊亮(いとう・しゅんすけ)
1979年6月27日生まれ、神奈川県出身。神奈川県立大和高校を経て、2002年中央大学卒業。現役時代は強靭な肉体と204センチの長身に走力を兼ね備えたフィジカルプレイヤーとして日本代表でも長きに渡って活躍した。2018年4月、千葉ジェッツでのシーズンを最後に現役引退。現在は千葉ジェッツのフロントスタッフとしてチームを運営側から支えている。HP:千葉ジェッツ

※データは2月8日時点

※スポーツ庁委託事業「スポーツキャリアサポート戦略における{アスリートと企業等とのマッチング支援}」の取材にご協力いただきました。
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