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2018年7月13日12時53分

「異色の経歴だからこそ付加価値を与えられます」サッカー用品専門店 畠匡輝さん

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知りたい!就きたい!スポーツの仕事 連載16回目~サッカー用品専門店 編~
サッカーショップKAMO畠匡輝さんに話を聞いた
2020東京五輪に向け「スポーツ業界で働きたい!」と思っている学生や転職を希望している人が多くなる中、どんな職種があるの?どんなスキルが必要なのか?など分からないことが数あり、仕事の実際を知ることが意思決定には重要となる。そこで、スポーツを仕事としている人にインタビューし、仕事の“あれこれ”を聞いた。

企業:加茂商事株式会社 サッカーショップKAMO
役職:渋谷店 主任
名前:畠匡輝(はた・まさてる)
職業歴:2017年~

仕事内容
・接客&販売
・商品の管理
・売上の管理

取材・文/斎藤寿子
夢を与え背中を押してくれたJリーガーの言葉
2017年2月に、加茂商事株式会社に入社した畠匡輝さん。現在はサッカー用品専門店「サッカーショップKAMO」渋谷店で主任を務める。

2016年までの約5年間は、Jリーグのチームで『ホペイロ』として働いていた畠さん。『ホペイロ』とは、ポルトガル語で“サッカー選手の用具整備係”という意味。

「職務の内容はクラブによってさまざまですが、主に練習着やスパイクなど、選手が使用する用具全般を管理します。つまり、選手が最高のパフォーマンスを発揮できるように、用具をマネジメントする人のことをさします」

と畠さん。クラブによってはスパイク専門職とするところもあり、既存のスパイクを選手個々にあわせて加工する職人的存在である。

サッカーの裏方の仕事に憧れを抱いたのは、小学5年生の時。きっかけは、テレビでJリーグの試合を見ていた際、ある選手のインタビューでの言葉に強い感動を覚えたことだった。

「僕たち選手はいつも100パーセントでプレーしている。ただ、僕たちが100パーセントでやれるのは裏で支えてくれている人たちの存在あってこそなんです」

その言葉の主は、“名フリーキッカー”として鳴らした当時、横浜F・マリノスの三浦淳寛さん(現・ヴィッセル神戸スポーツダイレクター)だった。

「三浦さんの言葉を聞いて、“へえ、そういう仕事もあるんだ”と思ったんです。僕はもともと表に出るのが好きなタイプではなく、どちらかというと裏でコツコツやるのが好きな性格でした。だから、“あ、僕もそういう事がしたいな”と思いました」

その後、畠さんは裏で選手を支えるホペイロのことを知り、その職業に就きたいと思うようになった。

しかし、高校3年の時に進路を決める際、どうすればホペイロという職業に就けるのか、その道がわからなかった。何か資格があるわけでもなく、職業自体、一般的には知られていない。

そこで、ひとまずスポーツの専門学校に入学。コーチやトレーナーの勉強をし、いくつか資格も取得した。そんな中、転機となったのは2年生の時。学校と提携していた関係から、横浜FCで実習生として働くことができたのだ。

すると、運命の歯車が動き出した。実習を始めて1週間後、ある選手が移籍してきた。それは、テレビの向こう側から夢を与えてくれた三浦さんだった。実は畠さん、横浜F・マリノスの本拠地だった三ツ沢公園球技場に、子供のときからよく遊びに行っており、そんな“サッカー少年”の顔を三浦さんも覚えてくれていたのだ。

会った瞬間“あれ?ここで何してるの?”と声をかけてきてくれた。そこで実習に来ていること、将来はホペイロになりたいということを話した。すると、三浦さんはすぐに自分の新しいスパイクを持ってきて、こう言ってくれたのだ。

「このスパイク、今度の移籍一発目の試合で履くから、それまで管理してくれよ。チームにはオレがいっておくから」

その1週間後、実習を終えた畠さんに三浦さんは“今度は実習生としてではなく、選手とホペイロとしてオレのスパイクを見てくれよ”と送り出してくれた。それ以降、シーズン中に観戦に行ったりして会うたびに、こう言ってくれた。

『諦めなければ、絶対に見ている人がいるから』

その言葉に、畠さんは何度も背中を押され、改めてホペイロへの思いを募らせていった。

専門学校卒業後、1年間はフットサルコートやサッカーチームのコーチの仕事をしていた。そんな時、偶然会ったのが故・奥大介さん。前年、実習生としてチームにいた畠さんのことを覚えてくれて、声をかけてきてくれたのだ。現況を説明すると、当時現役を引退し、横浜FCのサッカースクールでテクニカルアドバイザーを務めていた奥さんからこんな提案をもらった。

「だったら、うちのスクールから始めればいいんじゃない?」

そうして奥さんがチームに話をしてくれたことがきっかけで、畠さんは横浜FCに入社。その後、奥さんが強化部長に就任すると、畠さんをトップチームに引っ張り上げてくれた。この時、思い出されたのが三浦さんの言葉だった。

「ずっと三浦さんが言ってくれていた通り“諦めなければ見てくれている人がいる”と。本当にありがたいなと思いました」
”最後に決めるのはお客さま”を常に念頭に接客
Jリーグのトップチームで裏方として選手を支えていた畠さん。写真・アルビレックス新潟
それから5シーズン、横浜FCとアルビレックス新潟で畠さんはJリーグのトップチームで裏方として選手を支え続けた。仕事の内容は、練習前の用具やドリンクの準備から片付け、スパイクの加工と多岐にわたる。練習中、常に注意していたのは選手の足元だったという。

「選手が履いているスパイクがきちんと合っているものなのか、直した方がいいところはないか、ということを見ていました。合っていないスパイクでは、ケガをするリスクも大きいですし、パフォーマンスが出せないですからね。自分で気付いたところがあれば、選手に声をかけたり、あるいは選手から要望があった時にはすぐに対応するようにしていました」

選手それぞれの足の形や状態によって、ポイントとなる部分を削ったり高さを調節するなどする。念願のホペイロとしての仕事は楽しかったし、やりがいもあった。そんな充実した日々を送りながら、その半面、徐々に芽生えていったのは“もっと可能性はないのだろうか”ということだった。昨年、Jリーグのクラブからも誘われていたが、翌シーズンのことを考えた時、どうしようか迷い始めていた。

そんな時に声をかけてもらったのが、現在の職場である加茂商事。”サッカー専門用品店で働いてみないか”という誘いだった。畠さんは1カ月近く悩んだ末、新しい道に進むことを決めた。果たして、決め手となったのは何だったのか。

「ホペイロとしてJリーグの現場で働いてきた自分の経歴を活かせば“既存の店員とは違う存在価値が見いだせるのではないか”“新しいものを創出できるのではないか”と思ったんです。実際に選手と関わってきた自分だからこそ、選手が用具に求めていることも理解しています。それは、従来のスポーツショップ店員にはないもので、異色の経歴を強みにすれば、新たな可能性も出てくると感じました」
お客さんとの会話から足の形などを聞き、最も適したスパイクを提案する
入社後、畠さんが心がけているのは顧客のことを第一に考えた『接客』。決して販売目的だけで話をするのではなく、その顧客にとって最も適したスパイクはどれなのかということを提案する。とはいえ、実際にプレーしてもらうわけにはいかないので、会話からの情報と足の形などから見分けるのだという。

「グランドの環境やプレースタイルなどを教えてもらい、あとは体格や筋肉の付き方などを見ながら『この形のスパイクでは、こういう負担がかかっているので、こっちのメーカーの方が合っているんじゃないかな』と。でも、それはあくまでも提案。僕が持っている知識や情報は惜しむことなく出したいと思いますが、最後に決めるのはお客さま。実際に履くのも、僕ではなくお客さまですからね。常にそのことは肝に銘じています。ただ、僕が薦めたスパイクを履いた時に“本当だ、これいいですね!”と言われると、やっぱり嬉しいです。満足して笑顔で帰ってくれることが一番ですね」

現在は販売が主だが、ゆくゆくはホペイロとしての経験をショップ内で活かしたいと考えている。

「スパイクについてアドバイスするだけでなく、お客さまが新しいスパイクを購入する際に、Jリーグのクラブチームでやっていたように、一人一人に合った加工なんかもしていければと思っています。そんなサッカーショップってあまりないと思うんですね。だから、このお店にしかない付加価値を生み出せるはずです」

少年時代に抱いた夢を実現させた畠さん。しかし、まだ終わりではない。これまで支えてくれた人、背中を押してくれた人たちへの感謝の気持ちをこめて、さらに邁進していく。
【店舗情報】
HP:サッカーショップKAMO 渋谷店
営業時間:11~21(平日)、10~21時(土日祝)※年中無休
住所:東京都渋谷区宇田川町3-10 渋谷フットボールタワー
電話番号:03-5784-4800

※データは2018年7月13日時点
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