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2018年5月10日16時55分

「会社の運命を変えたのはラグビー“エディジャパン”との出会いでした」スポーツIT企業 宮田誠さん(前編)

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知りたい!就きたい!スポーツの仕事
連載14回目~スポーツIT企業編~
ユーフォリア代表取締役の宮田誠さんに話を聞いた
2020東京五輪に向け「スポーツ業界で働きたい!」と思っている学生や転職を希望している人が多くなる中、どんな職種があるの?どんなスキルが必要なのか?など分からないことが数あり、仕事の実際を知ることが意思決定には重要となる。そこで、スポーツを仕事としている人にインタビューし、仕事の“あれこれ”を聞いた。

企業:ユーフォリア
役職:代表取締役/Co-founder
名前:宮田誠(みやた・まこと)さん
職業歴:2008年~

仕事内容
・コンディショニング管理
・各種データベース開発などスポーツ領域におけるITソリューションの提供
・スポーツマーケティング、コンサルティング

取材・文/斎藤寿子
アスリートの体調を管理するツールを開発
2015年ラグビーワールドカップイングランド大会で、日本が優勝候補の一つであった強豪の南アフリカを逆転トライで撃破した試合は“史上最大の番狂わせ”といわれ、3年経った今も、その栄光は色あせていない。

それまで24年間、ワールドカップでたった1勝しかあげていなかった日本代表チームが、世界を震撼させるほどの強さを身に付けた背景には、エディ・ジョーンズHC(現イングランド代表HC)による過酷なトレーニングがあったことは周知のとおり。

実は、そのトレーニングをシステム面から支えていたのが、選手の体調、トレーニング記録、ケガの履歴などをすべて一括して管理・把握するツール『ONE TAP SPORTS(ワンタップスポーツ)』にあった。その生みの親が、ユーフォリア代表取締役の宮田誠さんだ。

以前は、自動車タイヤの世界トップメーカー、ブリヂストンでマーケティングを担当していた宮田さん。仕事に充実感はあったものの、直接自分自身の手で生み出し、世の中に新しいものを提供したいという気持ちから一念発起。同じ志をもつ仲間とともに、ベンチャー企業を立ち上げた。会社名は、イタリア語で“多幸感”を意味する『ユーフォリア』と名付け、マーケティングやシステム開発するコンサルティング業を中心にビジネスを展開した。

転機となったのは、起業5年目の2012年。過去にラグビー日本代表チームに携わっていた友人から“ITで選手の体調管理をするツールを開発できないか?”という依頼がきた。

「当時は、2019年にラグビーワールドカップの日本開催が決定し、エディ・ジョーンズがHCに就任した初期のころでした。日本代表は、2019年に向けてすでに本格始動しており、2015年大会ではベスト8進出を果たすという目標が掲げられていました」
使いやすさは『足し算』ではなく『引き算』
体調を管理するツール『ONE TAP SPORTS』。選手の負担にならないことを第一に考え開発された
日本ラグビーフットボール協会には、すでに2019年に向けての細かな経営戦略プランが確立されていた。それが、依頼を引き受ける理由として、非常に大きかったという。

スポーツに特化したシステムを作った経験はなかったが、宮田さんたちにとって依頼者の要望をシステム自体に落とし込む作業はそう難しいことではなく“不可欠なのは依頼者が何を求めているのか。その理解であった”からだ。その点、協会は2019年から逆算し、どの時点でどんな成果を出すのか、そのストーリーが完成されていたため、すぐに理解することができたという。

そして何よりも“自分たちの心が動かされた”と宮田さんは話す。

「経営戦略が非常に素晴らしく、それを実現させるために協会は、世界から各専門分野のプロを招集していました。僕たちのシステムは、その一つのピースに過ぎなかったのですが、自分たちも伴走していくパートナーとして一緒に戦っていきたい、という熱い気持ちにさせられたんです」

そんな中、システム開発においてエディHCから要望の一つとして挙げられたのが“選手に負担をかけない”こと。そのために必要だったのが『足し算』ではなく『引き算』の概念だったと説明する。

「例えば、選手の体調管理をしようとした時、よくあるのは選手のことを知りたいと思うあまり『あれもこれも』と項目を増やしてしまう傾向があります。でも、それが選手の負担になってしまっては本末転倒です。だからこそ、絶対に落とせないものは何なのかを見極めて、たくさんあるものから削ぎ落としていく作業が必要でした」

そのために、代表チームのスタッフと何度も話し合い、システムを改善していく作業が繰り返し行われ、強化合宿の現場にも足を運んだという。それは“本当に理解していいものを提供したい”という宮田さんたちの思いの表れだった。

「一見、システム開発者がスポーツの現場に足を運んで何を見るの? と思うかもしれませんが、やっぱり現場に足を運んで、全体をとらえることって重要なんです。選手がどんな環境の下、どれほどの疲労の中で自分たちのシステムを利用しているのか。それが“使いやすさ”への気づきとなる。それにシステムに書き込まれている練習メニューや食事についても、単なる字面だけでなく、実際どういうものなのかを理解することも大事。“現場”と“システム”は綿密につながっているんです」(前編終わり)

後編はこちらから

※データは2018年5月10日時点
宮田誠(みやた・まこと)
明治大学商学部産業経営学科卒業後、商社、半導体JV、ブリヂストンでのマーケティング担当のキャリアを経て、ユーフォリアを設立。マーケティング/マネジメントコンサルティング、システム開発を行う。スポーツ選手のコンディション管理システム「ONE TAP SPORTS」シリーズを、ラグビー日本代表をはじめとする多くのチームに展開中。長野県出身で親族に3名の冬季五輪(アルペンスキー)選手がおり、自身もランニング・スキーなど各種スポーツ国際大会の企画・運営を行っている。HP:ユーフォリア
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