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2018年1月12日14時54分

「一番大切なのは、選手と密接にコミュニケーションを取り“困りごと”を解決していくことです」パラアスリートの技術支援 小平美帆さん(後編)

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知りたい!就きたい!スポーツの仕事現場
連載13回目~パラアスリート技術支援編~
ブリヂストンイノベーション本部の小平美帆さんに話を聞いた
2020東京五輪に向け「スポーツ業界で働きたい!」と思っている学生や転職を希望している人が多くなる中、どんな職種があるの?どんなスキルが必要なのか?など分からないことが数あり、仕事の実際を知ることが意思決定には重要となる。そこで、スポーツを仕事としている人にインタビューし、仕事の“あれこれ”を聞いた。

パラアスリートの技術支援 小平美帆さん前編

ブリヂストン イノベーション本部
イノベーションマネジメント部 調査研究ユニット 主任部員
名前:小平美帆(おだいら・みほ)さん
職業歴:2016年~

仕事内容
・選手の悩みをヒアリング
・現地での調査
・パラアスリートの用具研究・開発

取材・文/斎藤寿子
パフォーマンス向上に貢献したソール開発
小平さんが所属するイノベーションマネジメント部の調査研究ユニットが、パラリンピック競技を見たうえで、最初に目をかけたのが、パラトライアスロン。「スイム」「ラン」「バイク」の3競技を行う中、注目したのが「ラン」で使用する義足のソール。そこにはブリヂストンならではの着眼点があった。

「タイヤなどのゴム製品の制御技術が主な事業である私たちは、いつも地面の部分を見る習慣が身についているんです(笑)。レースを見に行った時も、注目したのが選手の足元でした。だからこそ気づいたのが、ランの時の義足のソールだったんです」

それ以前に陸上競技の義足ランナーたちが、義足の先に一般のランニングシューズを付けている選手がいることを知った小平さん。“そうであるならば、ゴム製品を強みとする自分たちにできることがあるはず”そう考えていた。

既にブリヂストンサイクルの支援を受けていたパラトライアスロンの秦由加子に話を聞くと、市販されているランニングシューズのソールを切って義足に接着させており、

「雨天時やヨーロッパに多い石畳では、義足が滑り、思うように走ることができない」

という“困りごと”が浮上。そこでブリヂストンの技術力を活かし、グリップ力をアップさせたソールの開発に着手した。すると、そこには新たな発見があったという。

「意外にも高いレベルで求められたのは、耐久性でした。というのも、私たちが考えていたよりも、義足にかかる負担はかなり大きかったんです。ですから、健常者とはまた違ったアプローチが必要だということが分かったんです」

試作品がテストされ改善を繰り返し、ソールの試作品が完成。秦はこれを使用し、10月に米国で行われたITUパラトライアスロンワールドカップで見事に優勝。成果が表れた形となった。

また現在は、車いすテニスやパラバドミントンの車いすクラスの選手が使用するグローブの開発にもあたっている。実は、車いす選手たちがこれまで使用してきたのは、市販されている一般的なグローブ。簡易な滑り止めは付いてはいるものの、それには競技のための技術が施されてはいない。そのことを知った小平さんは、すぐにグローブ開発を提案した。

同社グループの社員でもある車いすテニス田中愛美からの要望は『操作性』と『耐久性』の2点。それに応えるため、現在、日々試行錯誤している。
業務の枠を超えた「やりがい」
パラトライアスロンの秦由加子が装着している義足のソールを開発。2020年に向けて、より良いソールを開発するために、現場に足を運び課題点など様々なことをヒアリングする
こうしたパラアスリートへの技術支援活動において、小平さんたちが心がけていることは密接なコミュニケーションだ。

「アスリートという部分においては、オリンピックの支援活動と同様だと思っています。ただ、パラ競技それぞれの特徴があって、どういうシチュエーションで、どういう動きをする中で、用具が使われているのかということについては、まだまだ勉強していかなければいけないと思っています。そうした中、一番大切にしているのは、選手と密接にコミュニケーションを図ること。だからこそ、現場にも足を運んで、そこで起きていることを把握することも重要だと考えています。競技やアスリートに対して、いかに正しく理解して、技術者に伝え、製品開発に取り込めるか。両者の仲介役でもある私たちのセクションの重要な仕事です」

業務は、製品開発したら終わりではなく、国内のレースや試合には可能な限り足を運び、その開発されたモノが、実際にはどのように使用されているのか、その後のフォローにも注力している。

「選手に使い心地を聞けばいいだけと思うかもしれませんが、それだと実は『理解した気になっている』だけということも少なくありません。やはり現場でしか知ることができないこと、実際に自分の目で見なければ分からないことがたくさんあるんです」

それは“どんなビジネスでも同じ”と小平さんはいう。知的財産を扱っている際にも、図面や書類だけではわからないことがあれば、すぐに技術者に会い、実際に製品を手に取って理解したことが何度もあった。その経験が、現場を大事にする原点となっている。

パラアスリートに関わり始めて、もうすぐ1年が経とうとしている。この仕事のやりがいを聞くと、こう答えてくれた。

「世界を相手にしているトップアスリートとやりとりができ、直にレスポンスがあるというのは嬉しいですし、やりがいを感じます。そういうセクションは、弊社でも限られている中で、そこに自分が携わらせていただいているというのは、本当にありがたいです。大会に行って、目の前で私たちが提供した製品を使って活躍した姿を見た時には、チームみんなで盛り上がるんです!業務という枠を超えて、チーム一丸となって熱い気持ちでやれています」

世界をリードしてきたブリヂストンの技術が、日本のパラアスリートを世界トップへと押し上げていく。

HP:チームブリヂストン

※データは2018年1月4日時点
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