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2017年10月31日14時48分

【特別対談】JPホールディングス荻田和宏氏×アルペンスキーヤー皆川賢太郎氏 ~アスリートを活かす企業の在り方。その未来とは~

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JPホールディングス荻田和宏氏とアルペンスキーヤー皆川賢太郎氏がアスリートと企業について対談を行った
保育園をはじめ、学童クラブや児童館の運営を手掛ける子育て支援事業のリーディングカンパニーであるJPホールディングス。一方で、アスリート雇用も積極的に行うなど、スポーツ界に貢献したいという想いがある代表取締役社長の荻田和宏氏。トップアスリートの意見を聞くべく、今回アルペンスキーヤーとして4大会連続で五輪出場後、全日本スキー連盟常務理事に就任した皆川賢太郎氏との対談が行われた。JPホールディングスの今後の展望や引退後のキャリアの活かし方について語りあった。

文・太田弘樹
写真・矢田部裕
「将来は総合スポーツ教育施設を設立したい」(荻田氏)
子育て支援事業を行うJPホールディングス社長の荻田氏
皆川:JPホールディングスのグループ傘下の日本保育サービスでは、陸上7種競技の中田有紀選手、障害者卓球の鈴木伸幸選手が所属されています。そして、今年の4月からは、アルペンスキーの新井真季子選手が入社しました。アスリートを雇用する理由はどこにあるんでしょうか。

荻田:選手を応援すること、そのものに意味があります。スポーツに打ち込んでいる人を応援することによって『一緒に盛り上げていこう!』『がんばっていこう!』と、社員たちも団結してくれると思いました。応援を通じて、みんなが協力し合える組織を作っていく一助になると考えました。

皆川:そうなんですね。また僕がすごく気になったのは、2020年に東京五輪・パラリンピックが目前に迫っている中で、あえてウィンタースポーツであるアルペンスキーの新井さんを採用したことです。

荻田:私たちは、子育て支援を事業にしています。今まではお子さまをお預かりするというところに特化してきましたが、将来的にはそこから一歩外に出て、もう少し『幅広い子育て』ということを事業にしていきたいという想いがあります。

私は、多分成人するまでが、全部子育てじゃないかなと感じています。勉強は当然のこと、体育も非常に大事ですし音楽・芸術もその中に入ってくると思うんです。このように、幅広い意味で教育という分野にトライしていきたいと考えています。スポーツというところで、何か事業として成立させ、スポーツ界に貢献してきたいですね。

約3年後には東京で五輪・パラリンピックが開催されますが、そこだけを見据えているわけではなく、理想は米国にある総合スポーツ教育施設IMGアカデミーのようなものを設立できたらと思っています。もちろんすぐには無理ですが、現在は小学生を対象にスキー合宿を実施したり、陸上7種競技の中田が先生になり走り方を指導するなど、体を動かす基礎的なイベントを定期的に開催しています。今できることを少しずつ行い、将来的には総合スポーツ教育施設のような大きな構想を形にしていくことを目指します。
「金メダルが全てではない。将来活躍できる場を提供する」(皆川氏)
アルペンスキーヤーとして4大会連続で五輪出場後、全日本スキー連盟常務理事に就任した皆川氏
皆川:私もアスリートとして現役を引退後、現在新たなキャリアを築いています。現在3名のアスリートを社員として雇用していますが、引退後のキャリアの活かし方はどのように考えていますか。

荻田:まずは選手として、大きい大会に出場してもらいたいですし、成績にもこだわってほしい。そのサポートを企業ができればと思っています。セカンドキャリアというところでは、陸上のウサイン・ボルトなど、超一流の選手でも必ず引退が訪れます。当社で、スポーツ事業としての取り組みがあれば、そこで先生など、いろいろな仕事をしていただけるので、単なるスポンサー企業ということではなく、できれば競技を終えても社員として働いてもらいたいと考えています。

皆川:今までだったら、広告塔としての価値で選手たちが存在していました。その人の経験や実績を担保しながら、企業として取り組む。選手として、とてもいい環境になりますね。同じ競技をしている新井さんは、荻田社長のようなアスリートのことを真剣に考えてくれる会社に就職できて羨ましいです。

荻田:やはり、皆川さんが現役時代のときはスポンサー探しも苦労しましたか。

皆川:そうですね、自分で企業を回って探していました。時には、受付の人に「アポイントを取れませんので」っていわれて帰ったことありました(笑)。あと考え方も今と違って、自分に商品価値があると思っていて…それでサポートしてくれるという、おこがましい思いがあった時がありました。そうではなくて、僕自身がやりたいことをサポートしてくれる、それだけでありがたいと気づけましたね。

そもそもスポーツ選手って、金メダルが“絶対”ではないでしょうし、成績を取ったときだけが、その人の人生ではありません。日本の中に金メダリストなんて山ほどいて、じゃあその人たちが全員裕福な暮らしをして、将来が安定しているかといわれれば、全くそんなことないので…スポーツってそういう一過性のものではないと思っていて。やっぱり教育など、活躍できるフィールドっていうのは、まだまだ整ってないとは思います。

荻田:そのスポーツ選手が活躍できるベースをしっかりと作っていきたいです。アスリートの方っていうのは、いろいろなものを犠牲にして、子どものころからスポーツに打ち込んでいるんですよね。全てを我慢して打ち込んでいるっていうのは、人としてすばらしいと思います。引退後もスポーツだけでなく、何でもできるんじゃないかなと感じています。

皆川さんは選手として引退後、現在は全日本スキー連盟常務理事の立場になられて約2年になると伺いました。外から見ているだけですが、すごく変化が出てきているように感じられます。

皆川:一番は、透明性がほとんどなかったんですよね。なので、そこを整理整頓していきます。まず、今回の全日本選手権を一発勝負にして、五輪選考にしていきます。やはり、スポーツが健全なものであるっていう姿勢を大会の中で出していくことで、国民のみなさんにもきちっと透明性がある競技・連盟だと思えるようにしていきたいです。

そのあとに、JPホールディングスのように、選手のことをきちんと考えてもらえるような民間企業と協力し、選手が現役中も引退後も活躍できる場を作っていきたいです。やはり、新しくしていくのは、連盟の本来やるべき仕事だと思います。

荻田:スポーツ界が盛り上がっていくように是非協力していきたいです。

皆川:IMGアカデミーを構想している荻田さんのような方がどんどん出てきてくれれば、スポーツの産業化も進んでいきます。これからよろしくお願いします。
(プロフィール)
荻田和宏(おぎた・かずひろ)
1965年6月12日生まれ、兵庫県出身。89年関西学院大学卒業後、大和証券に入社。99年にジェイ・プランニング(現JPホールディングス)に入社。2001年に取締役、07年には常務を務め、15年に代表取締役社長に就任。

皆川賢太郎(みながわ・けんたろう)
1977年5月17日生まれ、新潟県出身。幼少期からスキーを始め、常に日本スキー・アルペン界の第一線で活躍。1998年長野、2002年ソルトレークシティー、06年トリノ、10年バンクーバーと4大会連続で五輪に出場。トリノ大会では4位に入賞し、50年ぶりの日本人選手の入賞を果たした。引退後、15年10月に全日本スキー連盟常務理事に就任。17年6月には、全日本スキー連盟スキー競技本部長に就任するなど、スキー産業の発展に尽力している。
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