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2017年10月3日18時12分

茨城の人たちと共に紡ぐ夢をかなえるために!今も忘れられないある情景/サイバーダイン茨城ロボッツ社長 山谷拓志の歩んだ道筋 最終回

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(c)IRSE Masato Suzuki / 盛大に盛り上がる最終戦
「茨城の誇りになりたい――」

2016年9月に開幕した新プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」のサイバーダイン茨城ロボッツ代表取締役社長を務める、山谷拓志氏はそう口にする。

2015-16シーズンはNBL(旧トップリーグ)で順位でも観客動員数でも最下位。2014年には前運営会社の経営悪化によりチーム存続が危ぶまれる事態に陥ったこともある。だが、サイバーダイン茨城ロボッツが目指しているのは、2020-21シーズンまでにBリーグのチャンピオンになることだ。現状を見れば、決して容易ではない、それどころか不可能な目標のようにも思える。だが、最初から諦めるようなことはしたくないと山谷氏は言う。その高みに向かって妥協することなく挑戦する姿、そして強い姿を県民の人々に見てもらいたい、と。

茨城の出身ではない山谷氏が、なぜそこまでの情熱をサイバーダイン茨城ロボッツに注いでいるのか。「人生、山あり谷あり、志をきり拓く。名前の通りですね」と笑う山谷氏の半生を振り返りつつ、山谷氏がサイバーダイン茨城ロボッツに懸ける思いをひも解いていく。今回ついに、最終回を迎える。

(これまでの話)
第1回『茨城の誇りになりたい!』 “のびしろ日本一”の地で見据える大きな夢
第2回『バスケ界がうらやましく見えた』 訪れた転機に挑戦を決意したわけ
第3回 創設3年目にして奇跡の日本一!その成功の要因とはいったい何だったのか
第4回『日本バスケ界にとってリーグ統合は絶対的な命題だった』 リーグの統合に懸けた想いとは?
第5回『ここで成功したいという意欲がより強くなった』 想像を絶する困難に立ち向かった日々
第6回 地元・茨城を愛する人たちの強い想いを乗せて! Bリーグ参入へ立ちはだかった最後の壁
ついに始まったBリーグでの挑戦
2016年秋に開幕するBリーグの参入の前に立ちはだかった最後の壁、「一定数以上の収容能力を持つホームアリーナの確保」という条件をギリギリのところでクリアした山谷氏は、反転攻勢に出た。

ロボッツのホームタウンをつくば市に加えて水戸市も含む茨城県全域へと変更し、本拠地をつくば市から水戸市へと移した。地元・水戸を愛し、街を盛り上げようと取り組んでいる人たちと交流していく中で、グロービス経営大学院の学長として知られる堀義人氏との邂逅(かいこう)を果たす。2人はすぐに意気投合し、堀氏はロボッツへの出資と、取締役として経営に参画することを決めた。一度は経営悪化によりチーム存続が危ぶまれる事態にまで陥ったこともあったロボッツだが、こうして資金繰りが改善し、経営状態は安定するようになっていった。

そして、2016年9月24日、ついにBリーグ開幕戦を迎えた。(※ロボッツはB2リーグ東地区の所属に。東地区1位もしくはワイルドカードによって、目標に掲げているB1昇格を懸けたプレーオフ進出を目指した)

開幕戦はアウェーの地で青森ワッツと対戦。緊張からか選手には硬さも見られ、第3Qでは一時10点差をつけられたものの、第4Qで見事な逆転劇を演じてみせた。その勢いでロボッツは9月から10月を7勝5敗と白星先行で乗り切ったものの、ここから大きな試練が待ち受けていた。11月から翌年2月は8勝20敗、ホーム戦に限っていえば13連敗を喫してしまったのだ。

「チームが低迷していた要因は、自分たちのバスケができていなかったことにありました。いろいろと難しいことをやろうとし過ぎていて、選手が迷いながらプレーしているなという課題を感じていました」

このままではいけない――、そう考えた山谷氏は決断を下す。アシスタントヘッドコーチ兼選手だった岡村憲司をスーパーバイジングコーチ(監督)に指名。さらに、外国籍選手、帰化選手として、アンドリュー・ランダル、青島心を獲得した。

ここからロボッツは快進撃を始める。一時は5位(6チーム中)まで順位を落とし、B1昇格の夢は遠のいたようにみられていた。だが3月に入り、シーズン3度目の3連勝、さらに1つの黒星を挟んで6連勝を飾るなど、チームは上昇気流に乗った。

「岡村が監督になってからは、自分たちがやることをシンプルにし、やるべきことを徹底してやることで、選手たちが迷いなくプレーできるようになった。そこにアンドリュー、青島といった質の高い選手が加わったことで、安定した得点力を発揮できるようになったことが大きかったといえるでしょうね」

大逆転でのプレーオフ進出を信じ、ロボッツに関わる全ての人たちが最後まで諦めずに戦い、シーズン終盤には怒涛の7連勝も果たした。だが、最終順位は2位。目標としていたB1昇格は成し遂げられなかった。

「B1昇格を目指して1年間戦ってきましたので、成績には決して満足できていません。ですが、クラブとしていろいろな経験ができましたし、チームの基盤ができたシーズンになったと思っています」

B1昇格こそ手が届かなかったものの、この1年で地元におけるロボッツの認知度は確実に上がった。選手・スタッフが一緒になって何度も街頭でチラシ配りを行い、非常に多くの地域貢献活動もやってきた。そうした地道な活動に加え、チームの連勝によって地元全体が盛り上がってきたこともあり、シーズンが終わるころには観客動員数も右肩上がりに伸びていった。ホーム最終戦には実に、2709人ものファンが駆け付けた(シーズン平均観客動員数は約1000人)。

「後半戦の連勝と、最終的に2位にまで順位を上げたことで、いい形でシーズンを終えることができました。オフシーズンに入ってからも、『次の試合はまだなの?』といった声を掛けていただいたり、数多くの企業からもスポンサーについての問い合わせを頂戴している状況です。地元の皆さまからの期待感を強く感じています。来シーズンのB2制覇、そしてB1昇格は、願望や夢ではなく、達成すべき目標という認識でいます。強くて魅力のあるチームをつくっていき、皆さんの期待に応えられるようにしていきたいですね」
かなえたい夢
(c)IRSE Masato Suzuki / 山谷社長のスピーチ
山谷氏は最後に、ロボッツでかなえたい夢を語ってくれた。

「今のロボッツは、B2に所属するまだまだ弱小のチームかもしれません。しかし私たちは、2020-21シーズンまでにBリーグのチャンピオンになるという目標を掲げて活動しているのです」

確かにBリーグ初年度は、いい形で終えることができた。しかし、B1昇格を懸けたプレーオフに進出できなかったこともまた確かだ。2020-21シーズンまで、残り4シーズン。それまでに、B1昇格を成し遂げ、さらには強豪のそろうB1で優勝することは、決して容易ではない。いや、むしろ“ミッション・インポッシブル”ではないかとさえ思える。それでも山谷氏がこの“B1優勝”という目標を掲げているのは、今でもまぶたの裏に焼き付いて忘れられないある情景に思いを馳せているからだ。

「リンク栃木ブレックスでJBL優勝を果たした時(※第3回参照)、栃木県内がお祭り騒ぎとなり、宇都宮での優勝パレードには1万人もの市民が沿道を埋めてくれました。幸福にあふれたような満面の笑顔で歓喜の声を上げ、選手たちを祝福してくれた。まさにあの瞬間、ブレックスは栃木の人たちにとっての『誇り』となったのです」

山谷氏の言葉が熱を帯びる。

「茨城県は47都道府県別の魅力度ランキングでは最下位の常連で、現在4年連続で47位となっています。県民の人たちにとって、地元への愛着や自慢度が下がっているともいわれています。だからこそ私たちロボッツはプロバスケチームとして、強い姿を県民に見せたい。B1で優勝して、地元の人たち皆さんと喜びを分かち合いたい。私たちの夢は、『茨城の誇り』になることなんです」

コート内で勝利という結果を残すこと。そして、優勝を果たすこと。それは、プロスポーツチームとして常に目指すべき当然の目標だと山谷氏は言う。

「たとえ今は2部の弱小チームであったとしても、“優勝”に向けた道筋が閉ざされているわけではありません。それにもかかわらず最初から諦めてしまうのは、支援してくれている方々に対する裏切りではないかと思います。道が開けている以上、そこにたどり着くためにできることならどんな努力でもしていきたいと考えています」

ロボッツは、一難去ってまた一難と紆余曲折を経て、今ここまでたどり着くことができたチームだ。一度は破綻寸前にまで陥った。もし何か一つ違えば、本当に破綻していたかもしれない。それでも、わらをもすがる思いで何事にもチャレンジし、奇跡的な縁や運と巡り合って、なんとか生き延びてこられた。

そんなチームが、2020-21シーズンまでのB1優勝、そして『茨城の誇り』になるという目標を掲げていることに、本当にそんなことができるのかと言う人もいるだろう。だが、たとえ周りからは不可能だと思われていたとしても、ロボッツと山谷氏は、絶対に諦めない姿を体現していくに違いない。これまでも、そうしてきたように――。

「どんなに苦しくても諦めずに行動していくことで、どんな未来が待っているのか。ぜひ皆さんには、このチームの行く末を見届けてほしい。皆さんと一緒に、このチームの歴史をつくり上げていきたいですね」

山谷氏は、どんな時でも前を向く。見据えたその先にあるものにたどり着くために――。

茨城の人たちと共に紡ぐ夢をかなえるため、山谷氏は今日も走り続ける。

(完)
記事提供:Spportunity(スポチュニティ)

文・野口学(プロフィール…約10年にわたり経営コンサルティング業界に従事した後、スポーツの世界へ。月刊「サッカーマガジンZONE」編集者を経て、現在は主にスポーツビジネスについて取材・執筆を続ける。『スポーツの持つチカラでより多くの人がより幸せになれる世の中に』を理念として、スポーツの“価値”を高めるため、ライター/編集者の枠にとらわれずに活動中。 書籍『プロスポーツビジネス 私たちの成功事例』(東邦出版)。ウェブメディア『VICTORY』編集者。

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