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2017年9月28日14時48分

地元・茨城を愛する人たちの強い想いを乗せて!Bリーグ参入へ立ちはだかった最後の壁/サイバーダイン茨城ロボッツ社長 山谷拓志の歩んだ道筋 第6回

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サイバーダイン茨城ロボッツ社長 山谷拓志氏 (写真左)とグロービス経営大学院学長 堀義人氏 (写真右) (c) Ibaraki Robots Sports Entertainment
「茨城の誇りになりたい――」

2016年9月に開幕した新プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」のサイバーダイン茨城ロボッツ代表取締役社長を務める、山谷拓志氏はそう口にする。

2015-16シーズンはNBL(旧トップリーグ)で順位でも観客動員数でも最下位。2014年には前運営会社の経営悪化によりチーム存続が危ぶまれる事態に陥ったこともある。だが、サイバーダイン茨城ロボッツが目指しているのは、2020-21シーズンまでにBリーグのチャンピオンになることだ。現状を見れば、決して容易ではない、それどころか不可能な目標のようにも思える。だが、最初から諦めるようなことはしたくないと山谷氏は言う。その高みに向かって妥協することなく挑戦する姿、そして強い姿を県民の人々に見てもらいたい、と。

茨城の出身ではない山谷氏が、なぜそこまでの情熱をサイバーダイン茨城ロボッツに注いでいるのか。「人生、山あり谷あり、志をきり拓く。名前の通りですね」と笑う山谷氏の半生を振り返りつつ、山谷氏がサイバーダイン茨城ロボッツに懸ける思いをひも解いていきたい。

(これまでの話)
第1回『茨城の誇りになりたい!』 “のびしろ日本一”の地で見据える大きな夢
第2回『バスケ界がうらやましく見えた』 訪れた転機に挑戦を決意したわけ
第3回[『創設3年目にして奇跡の日本一!その成功の要因とはいったい何だったのか』
第4回『日本バスケ界にとってリーグ統合は絶対的な命題だった』 リーグの統合に懸けた想いとは?
第5回『ここで成功したいという意欲がより強くなった』 想像を絶する困難に立ち向かった日々
Bリーグ参入の前に立ちはだかった壁
NBL(旧トップリーグ)で専務理事として2016年の統合プロリーグ(現Bリーグ)の創設というミッションのために邁進していた山谷氏であったが、2014-15シーズンの途中、つくばロボッツ(当時のチーム名)が資金繰りの悪化によって存続が危ぶまれる事態にまで陥っていたことで、NBLを退任し、ロボッツの経営再建を託されることになった。

シーズン中に新運営法人・新チームを立ち上げ、毎週次から次へと試合が行われる状況の中で再建を進め、チームや経営を回していくための体制や運用づくりを同時に行い、さらには山谷氏自身が借金をして出資した6000万円の資本金の中で選手やスタッフの給与などのやり繰りをするという非常に厳しいシーズンではあったが、どうにか乗り切ることができた。

だが、NBLとしてはラストとなる2015-16シーズンを迎えるにあたり、またしても新たな困難に直面することになった。

翌2016-17シーズンからは、統合プロリーグであるBリーグがスタートすることが決まっていた。Bリーグでは参入条件の一つとして、一定数以上の収容能力を持つホームアリーナの確保が求められており、B1リーグの場合は5000人以上、B2リーグの場合は3000人以上となっている。

ロボッツがそれまでに使用していたアリーナではその条件を満たしていなかったが、つくば市総合運動公園に新設される予定のアリーナを使用することでクリアする想定だった。しかし、2015年8月2日に実施された住民投票で反対の票が上回り、この結果を受けて新設計画が白紙撤回されることになってしまった。

「一難去ってまた一難というわけではありませんが、8月末には参入審査の結果が出ることになっていましたので、このままではBリーグへ参入することができないという状況でした。しかし、このまま手をこまねいているわけにもいかない。すぐに茨城県内にどこか参入条件をクリアできる場所はないかと動き始めました」

審査結果が出るまで1カ月を切っており、時間は限られていた。だが、メインスポンサーのサイバーダインがネーミングライツを取得し(チーム名は「サイバーダインつくばロボッツ」へと変更)、経営も安定してきたこのタイミングでBリーグへの参入が認められないという事態だけは絶対に避けなければならなかった。わらにもすがる思いで走り続けていた山谷氏は、リーグ側との協議により水戸市の青柳公園市民体育館をメインアリーナとすることでB2リーグの3000人の収容数という基準をクリアすることができないかを模索することになった。さらには水戸市には2019年に茨城で開催される国体(いきいき茨城ゆめ国体)に向けて5000人の収容数となる東町運動公園体育館の建設も予定されており、将来的にはB1リーグの基準をも満たすことができる。山谷氏はすぐに水戸市へと向かった。

「水戸市の高橋靖市長にロボッツの状況を話したところ、『それならば水戸市で協力しましょう』と、早速リーグに提出する書類にハンコを押してくださいました。これは本当にありがたかったです。そして、青柳公園市民体育館に仮設スタンドを設置することで、B2基準を満たす3000人の収容数をクリアできることも分かりました。すぐにリーグに報告しに行ったところ、まさかそんな短期間で手はずを整えられるとは思っていなかったようで、大変に驚かれました。残念ながらこの時点では経営規模的にB1ライセンスは難しかったものの、B2ライセンスが発行されることになったのです」

目標としていたB1ライセンスには届かなかったものの、一時はリーグへの参入自体が危ぶまれたことを考えれば、上出来だといえるだろう。こうして無事、ロボッツはBリーグ参入を決めたのだった。
堀氏との邂逅
Bリーグが開幕する2016年、山谷氏は反転攻勢に出た。まずはホームタウンをつくば市に加えて水戸市も含む茨城県全域に変更。同年7月1日付をもって本拠地をつくば市から水戸市へと移し、チーム名を現在の「サイバーダイン茨城ロボッツ」に変更することになるが、行政との連携、スポンサー営業、地域住民へのPRなど、本拠地移転に伴い、やるべきことは山のようにあった。そのため、山谷氏は1月から先駆けて水戸市での活動を始めていた。

そんな中で、山谷氏はあることに気が付くようになった。

「これはあくまでも個人的な印象かもしれませんが、茨城の人たちは皆さん、本当に地元を愛しています。その中でも、水戸の人たちの地元愛は特に強いように感じます。このままでは街が衰退するぞという危機感から、もっともっと地元を盛り上げていこうという機運が高いように思います」

全国的にも人口減少、少子・高齢化の進行に伴う労働力の低下や消費需要の縮小が地域経済へ与える影響は無視できず、特に地方都市においてはその傾向が顕著で、水戸市も例外ではない。だからこそ、水戸市では魅力ある街づくりに向けた取り組みを積極的に行っている。ロボッツへの支援を即決した背景も、こうしたところにあるのだろう。

「また、水戸の人たちは起業家精神が旺盛で、東京で事業に成功している人も多い。茨城出身者によるつながりも強く、地元に対して積極的に投資を還元しようとしていますね」

こうした水戸の人たちと交流していく中で、グロービス経営大学院の学長として知られる堀義人氏と出会うことになる。

「2月に参加した『水戸ど真ん中再生プロジェクト』の懇親会で、偶然、堀さんと席が隣になりました。堀さんは水戸の出身で、地元への恩返しをしたいという気持ちを強く持っていらっしゃった。ロボッツのことをお話したら、以前に川淵三郎さんからバスケの話を聞いていて、実はBリーグに興味を持っているということでしたね。

後日、あらためて連絡を取り支援のお願いをしたところ、堀さんはロボッツに出資するだけでなく、経営にも参画して一緒に盛り上げていこうという話になりました。これも奇跡的な話で、本当にありがたかったですね」

こうしてロボッツは資金繰りが改善し、経営を安定させられるようになった。ここまで数多くの苦難はあったものの、多くの人々の地元・茨城に対する熱い想い、この地にプロバスケチームを絶やしてはいけないという頑強な意志、そして山谷氏が愚直なまでに続けてきた努力が結実し、ついにロボッツはBリーグ開幕を迎えることとなった。

(第7回『最終回』へと続く)
記事提供:Spportunity(スポチュニティ)

文・野口学(プロフィール…約10年にわたり経営コンサルティング業界に従事した後、スポーツの世界へ。月刊「サッカーマガジンZONE」編集者を経て、現在は主にスポーツビジネスについて取材・執筆を続ける。『スポーツの持つチカラでより多くの人がより幸せになれる世の中に』を理念として、スポーツの“価値”を高めるため、ライター/編集者の枠にとらわれずに活動中。 書籍『プロスポーツビジネス 私たちの成功事例』(東邦出版)。ウェブメディア『VICTORY』編集者。

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