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2017年9月26日10時45分

「アスリートの大半は個人事業主=社長です。視野の広さやお金に対する意識をもってほしい」アスリート専門公認会計士・税理士 國井隆さん(後編)

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知りたい!就きたい!スポーツの仕事現場
連載12回目~税理士編~
オフィス921代表取締役の國井隆さんに話を聞いた
2020東京五輪に向け「スポーツ業界で働きたい!」と思っている学生や転職を希望している人が多くなる中、どんな職種があるの?どんなスキルが必要なのか?など分からないことが数あり、仕事の実際を知ることが意思決定には重要となる。そこで、スポーツを仕事としている人にインタビューし、仕事の“あれこれ”を聞いた。

アスリート専門公認会計士・税理士 國井隆さん前編

オフィス921代表取締役
名前:國井隆(くにい・たかし)さん
職業歴:1996年~

仕事内容
・スポーツビジネスに関するコンサルティング
・球団やクラブの運営に関するコンサルティング
・スタジアムに関する運営コンサルティング
・選手のファイナンシャルプランニング

取材・文/奥田高大
日本におけるアスリートの地位向上も目指す
國井さんが代表を務めるオフィス921では、スポーツに関する業務のほか、一般的な税理士法人と同様、企業の税理業務も請け負っている。数年前まで、売り上げの約1/3がスポーツに関する業務、残りが企業の税理業務だったが、2020年に向けた盛り上がりや、アスリートの意識の向上もあり、昨年、初めてスポーツアカウンティングにおける売上げが半分以上を占めた。

しかし、スポーツアカウンティングの業務はやりがいはあるものの、難しさもあるという。

「例えば、球団やクラブにおける税理業務や運営のコンサルティングは、一般企業と近く、それほど特殊ではありません。難しいのは対アスリートの業務です。一般的に税理業務は企業の経営者や経理担当、個人であれば、本人と話すことが大半。ですが、アスリートから業務を依頼されると、実務の多くは家族や保護者と話しながら決めることになり、本人はお金のことについて知らないまま。本人が稼いだお金のことですし、将来を大きく左右することなので、本当は本人と話したいのですが、アスリートは練習に打ち込まなければいけませんし、とくに若いアスリートに『将来のことを考えて、今からお金のことを勉強しよう』といってもピンきません。でもそうやって人任せにしていると、30代、40代になったときに困るのは本人です」

一方で、アスリートの気持ちにも寄り添わないといけない。

「僕らは専門家なので、どうしても難しい言葉を使ってしまったり、お金に関するプロとして、高いところから話してしまいがち。でも、そうすると当然、選手も聞く耳を持ってくれなくなります。スポーツアカウンティングの仕事をするには、選手に対してリスペクトの気持ちも持ちつつ、アスリートにとって耳の痛い話もしなければいけない。それが難しいところです」
そうした國井さんの厳しい意見も、アスリートの将来と日本におけるスポーツの地位向上を思ってこそ。アスリートが引退後も充実したセカンドキャリアを送るには、どのようなことが必要なのだろうか。

「アスリートとして練習に打ち込むのはもちろんですが、新聞を読むなど、一般の方と同じように、社会に興味を持って接する姿勢が非常に大事だと思います。例えば、私は業務上、多くの経営者と話をしますが、社長は自社のお金についてはもちろん、広く社会のことを知っています。プロとして活動しているアスリートの大半は個人事業主ですから、本来、社長と同じような視野の広さやお金に対する意識を持っていなければいけないんです。そうした意識を持つアスリートが増えることで、引退後も充実した人生を送れるはずですし、ひいてはアスリートの地位向上にも繋がっていくと思います」

國井さんのスポーツへの関わりは、税務業務だけではない。2011年からはアスリート支援のひとつとして、競技生活と業務を並行して続けられるアスリート社員の雇用を始め、その社員がリオデジャネイロ五輪にも出場。さらに今年の10月からは、公認会計士試験に合格した元プロ野球選手が入所。國井さんが思い描く、セカンドキャリアの理想が形になりつつある。

「今度、一緒に働くことになるスタッフも公認会計士、税理士や中小企業診断士などという形でスポーツに関わっていくことになりますが、多くのアスリートにとって、一番幸せなセカンドキャリアは、引退後もスポーツに関わる仕事に携われることでしょう。同じ税務のアドバイスでも、プロアスリートとしての経験があるうえで、選手にアドバイスすることができたら、選手に対しより説得力を持つはず。公認会計士や税理士などの資格を持つ、元アスリートの方がでてくれば、積極的に一緒に業務をしていきたいですね」
(プロフィール)
國井 隆(くにい・たかし)
1965年生まれ、東京都出身。公認会計士、税理士、行政書士、公認システム監査人。株式会社オフィス921代表取締役、税理士法人オフィス921代表社員、大学卒業後、旅行会社、青山監査法人/プライスウォーターハウスクーパースでの勤務を経て、1996年に公認会計士・税理士國井事務所及び株式会社オフィス921設立。2006年、税理士法人オフィス921を設立。スポーツアカウンティングを得意とし、球団やクラブ運営に関するコンサルティングのほか、多くのトップアスリートのファイナンシャルプランニングを担当している。HP:オフィス921
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