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2017年8月24日19時00分

一般社団法人Tリーグ理事の松下浩二氏が語る。日本卓球発展のための『Tリーグ構想』とは?

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Tリーグ理事を務める松下氏に『Tリーグ構想』と『競技場』について話を聞いた
2017年9月12日~14日、千葉県・幕張メッセで「スタジアム&アリーナ2017」と同時開催される「スポーツビジネスジャパン2017」。機運が高まる日本のスポーツ産業の拡大への課題解決と、スポーツコンテンツホルダーの経営力強化を創出するイベントで、展示会や、スポーツ経営改革をテーマとしたコンファレンスが行われる。今回は、14日に「世界一を目指す新リーグ(Tリーグ)構想」について、講師として登壇する、日本人初のプロ卓球選手で、現在は一般社団法人Tリーグ理事を務める松下浩二氏に『Tリーグ構想』と、理想とする『競技場』について話を聞いた。

取材・文/斎藤寿子
3歳から100歳までできる卓球で『地域貢献』
―今年3月30日、「一般社団法人Tリーグ」が設立されました。トップリーグの「Tプレミア」を頂点としたピラミッド型のリーグで、プロ、アマチュアを問わず、日本卓球界の発展を目指すということですが、具体的な構想について教えてください。

「現在、日本卓球協会に登録している会員は約33万人います。しかし、登録してない競技者も多く、その数は160万人といわれています。Tリーグは、その160万人の競技者も含めたかたちにしたいと考えています。まずはトップ選手の育成・強化。ラケット1本で食べて行くプロへの道の創出は、子どもたちの夢や目標となります。しかし、単に競技力を向上させるだけでなく、下部組織では卓球を楽しむ場を提供していきたいと思っています。トップと下部とでは、実際にやることは異なりますが、共通して取り組んでいくのは『地域貢献』。“3歳から100歳までできる”という卓球の最大の魅力を活かして、子どもたちに夢を与えると同時に、健康増進につなげていくことで、地域の活性を図っていきたいと思っています」

―「Tリーグ」を設立したきっかけは何だったのでしょうか。

「2008年北京五輪では、男女ともに団体戦で、もう一歩というところでメダルを逃すという悔しい思いをしました。その時、当時の会長が“五輪でメダルを取るためには、やはり日本にもプロリーグが必要なのでは?”という話をされたんです。それが最初のきっかけでした。その後、いろいろと意見を交換していく中で、2012年に『プロリーグ設立検討委員会』が発足され、中国やドイツのリーグを検証するなどしました。さらに、2015年には『プロリーグ設立検討準備室』と名称を変更し、JリーグやBリーグの関係者など、外部の専門家を招き入れて検討を進めてきました。そうした中で、地域に密着したドイツ型のリーグ発足へと舵を取り、今年3月に『一般社団法人Tリーグ』が設立されました」

―Tリーグの最大の狙いは『卓球を通じての地域貢献』ということですが、具体的にはどのようなことが地域貢献につながるのでしょう。

「五輪でメダルを取るという夢や目標を子どもたちに与えることはもちろん、強い選手が増えていくことで地域の競技力向上につながると思いますし、引退後のセカンドキャリアにも結びつくことだと思います。また、将来的には卓球を通じてアジア各国と友好な関係を築いていけるような外交的側面も含めていけたらなと考えています」
見やすさを追求した会場づくり
―松下さんは、現役時代にはドイツブンデスリーガでプレーしていた経験があります。環境面で、ドイツと日本との違いはどこにありましたか。

「私が所属していたチームは、自前の施設を持っていて普段は練習場として使用し、試合の時には、その施設がそのまま競技会場になるという感じでした。観客席は2000人ほどと、それほど大きくはありませんでしたが、卓球の試合が見やすいような作りになっていましたね。ドイツのように、チームが自前の試合会場を持っているというのは、日本にはあまり例がないですし、日本で“卓球をする”となると、体育館がほとんど。体育館は、あくまでも卓球を『する』ためで『見る』ための施設としては考えられていません」

―そういう中で、日本ではどのようにして「会場づくり」が行われているのでしょうか。

「最近では、試合に参加する選手たちだけでなく、見に来てくれる人たちのことも考えた会場づくりが行われてきています。例えば、スタンドがない体育館にも、1階のフロアに仮設の観客席をつくったりしているところも多いですね」

―今後は、どんな「競技場」が必要となってくるでしょう。

「今の時代、スポーツの発展には『する』だけでな『見る』という観点は外せないと思います。そういう意味では『見やすさ』ということが考えられた設計が必要になってくるのかなと。そうすると、大きいからいいという訳では決してないと思います。例えば、1万席あるような大きな施設を建てた場合、現在の人気を考えれば、おそらく観客席は埋まると思います。しかし『見やすさ』という点ではどうでしょうか。一番端の席の人には、ボールはほとんど見えません。そうすると、せっかく試合会場に足を運んでも、臨場感はまったくありません。私が理想とするのは3000~5000人、これくらいが丁度いい。盛り上がっている雰囲気も味わえると思いますし、何より試合を直接見たという満足感が得て、帰っていただけるはずです。そんな『見る』ことに適した競技場が増えていくといいなと思っています」

―ただ国際大会を開催した場合は、やはり卓球台を何台も置くことのできる広い会場が必要になります。

「そうですね。その場合は、やはり一番端の席の人にもわかるように、スクリーンが必要です。ただ日本の場合、大型スクリーンがあったとしても、2つほどしかなくて、席の向きによってはスクリーンが見えないこともあります。ですから、必ずスクリーンは全方向から見えることが大切です」

―最後に「競技場の未来像」を聞かせてください。

「会場に足を運んだからこそ、より卓球を知って、楽しんでもらえるような競技場だといいと思います。国際大会などの予選では、いくつもの対戦が同時に行われます。ですから例えば、すべての観客席にモニターがあって、自分で好きな対戦カードを選んで、その試合をアップで見ることができるといいですよね。また、選手のプロフィールや、選手が打ったボールの回転数やスピードがモニターに映し出されたりすると、より深く卓球が楽しめるのではないかと思います」
(プロフィール)
松下浩二(まつした・こうじ)
1967年8月28日生まれ、愛知県出身。93年日本人初のプロ卓球選手となり、全日本選手権シングルス4度優勝。スウェーデン、ドイツ、フランスの欧州3大リーグでプレーし、2009年に現役を引退。92年バルセロナ、96年アトランタ、00年シドニー、04年アテネ五輪に出場。現在は、一般社団法人Tリーグの理事を務めている。

※データは2017年8月24日時点
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