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2017年7月19日15時22分

2016リオパラリンピック『食』の舞台裏とは?食品企業・味の素が考えるスポーツへの支援活動

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2016リオパラリンピック選手たちのサポートを行った一番ヶ瀬和彦氏
2003年に日本オリンピック委員会(JOC)のオフィシャルパートナーとなり、09年からはゴールドパートナーとして、五輪日本代表選手や競技団体をサポートしている食品企業の『味の素』。

15年からは、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)のオフィシャルパートナーとして、パラアスリートや競技団体への支援活動をスタート。16年リオデジャネイロ大会では、五輪に続いてパラリンピックの期間中、現地で食と栄養のコンディショニングサポートをし、選手たちの活躍を支えた。今回は、味の素がスポーツ支援活動を行っている目的、そして初めてパラリンピックの現地でサポート活動を行ったリオでの舞台裏について、オリンピック・パラリンピック推進室の小原直子氏と一番ヶ瀬和彦氏に話を聞いた。

取材・文/斎藤寿子
“世界で勝つために”考案された『勝ち飯』
実際の食事のとり方などを知ってもらうために選手への勉強会を定期的に開催している
JOCオフィシャルパートナーとなった2003年、味の素では日本代表選手の国際競技力向上のための『ビクトリープロジェクト』チームを設立。JOCと共同で開発した世界で勝つための食事プログラム『勝ち飯』の提案・提供など、選手たちのコンディショニングサポートを開始した。

09年からは、ネーミングライツを取得した味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)の食堂にて『勝ち飯』プログラムを展開。選手たちが「何を食べるか」ではなく「何のために食べるか」を考えながら、体づくりを行うことができるような食事やノウハウを提供し続けている。

同室企画グループマネージャーの小原直子氏は、食事の大事なポイントについてこう語る。

「食事は、楽しく食べることができるから美味しいと感じられますし、それが栄養バランスのとれた食事につながります。だからこそ、私たちは楽しく食事がとれる環境作りにも力を入れているんです」

国際大会では、選手たちが実力を発揮できるように、コンディショニングサポートとして、食事や自社商品『アミノバイタル』など、補食のケアなどを行っている。さらに、NTCやその他の施設で行われる各競技団体の代表合宿では、栄養に対する知識や、実際の食事のとり方などを知ってもらうために選手への勉強会を開催。選手自身が自宅でどのような食事をとればいいか、勉強会を通してアドバイザー的役割も担っている。
リオで感じたパラアスリートの工夫する力
選手村の住居施設内に『ビクトリープロジェクトブース』を設置。選手たちが必要な時にいつでも持っていくことができるように、アミノバイタルなどのサプリメントや乾燥スープ類、調味料などを置き、活用アドバイスや相談にも乗った
こうして、早くから五輪を目指すトップアスリートの支援活動を行ってきた味の素。そのノウハウを活かして、15年からはパラアスリートにも支援活動の場を広げている。

16年5月からは、パラリンピック本番前の大事な時期を良いコンディショニングで過ごせるようにと、同社製品の『アミノバイタルGOLD』など、アミノ酸ベース顆粒4商品を無償提供するなど、五輪選手同様のサポートを行った。夏季パラリンピック22競技のうち、17競技団体147名の選手が活用したという。

またリオデジャネイロ五輪開幕後には、選手村の施設や食事の内容など、現地スタッフから送られてきた情報をパラリンピック代表選手団に提供。「車椅子での利用が可能か」「食堂ではどんな食材があり、どんな栄養を摂取できるのか」など、チームや選手たちの不安解消に努めた。

そして9月、パラリンピックが開幕。味の素では、選手村の住居施設内に『ビクトリープロジェクトブース』を設置し、アミノバイタルなどのサプリメントとともに、『鍋キューブ (※キューブ状の鍋つゆの素)』、乾燥スープ類、調味料などを置き、選手たちが必要な時にいつでも持っていくことができるように、スタッフが常駐し、活用アドバイスや相談にも乗った。

ところが現地入り後、予期せぬことが判明した。選手村の食堂に当然あると見込んでいた食材がいくつか無かったという。

スタッフの一人として、現地でパラリンピック選手たちのサポートを行ったビ同室ビクトリープロジェクトグループの一番ヶ瀬和彦氏は、こう語る。

「例えば、もやしと豆腐。オリンピックの時にはあったので、それらを使用したメニューを考え、選手たちが簡単に鍋料理などを作れるようにと弊社商品を準備して持ってきていたんです。ところが、現地に行ってみたら、全くなくて驚きました」

そのような中で一番ヶ瀬氏は、パラアスリートたちの”たくましさ”を感じたという。

「食材は決して豊富とはいえない中で、ある食材をうまく使って野菜などをきちんと摂っていました。選手たちからは『新メニュー』の写真が送られてきて、こちらが『なるほど!』なんて感心させられることもあったんです。どんな状況に置かれても自分たちで考え、工夫することができる力が備わっているんだなと感じました」

そしてもうひとつ、一番ヶ瀬氏が印象に残っているのは、ある選手からの言葉だ。

「車いすバスケットボール の選手に、リオの現場で言われたんです。『味の素さんは、僕らと最後まで戦ってくれる』と。その言葉を聞いた時、本当に嬉しかったですね。僕たちがやっていることが、ちゃんと選手たちに届いているんだなと思いました」

その言葉からは、一方通行ではないアスリートファーストを大事にしている姿勢が見てとれる。
今後はトップアスリートから一般生活者までサポート
2003年からトップアスリートへの支援を続けていく中で、新たな広がりへの期待が膨らんでいると話す小原直子氏
味の素の理念は”食を通じて社会や一般の生活者に貢献できる企業であること”。同社のスポーツへの支援活動もまた、この理念に基づいている。そして、03年からトップアスリートへの支援を続けていく中で、新たな広がりへの期待が膨らんでいると、小原氏は語る。

「1995年に販売開始した『アミノバイタル』によって、初めてスポーツ関連事業に参入しました。そこで、アミノバイタルを認知拡大させるためのツールのひとつとして、トップアスリートに活用し効果を実感してもらうことによって、一般の生活者へのシャワー効果を期待していたというのが当時の狙いでした。約15年支援活動を続けてきた中で、その活動は定着してきたという実感を抱いています。そして今後は、アスリートへの支援を、一般の方々のより良い生活のために、活用していけるようなことができればと思っています」

トップアスリートたちが世界で勝つために実践している『勝ち飯』は、部活を頑張る人、心身ともに健康で働きたい人、そして元気に毎日の暮らしを送りたい人など”豊かに生きること”を願う老若男女すべてにつながる。

「03年から始めたスポーツ支援活動は、直接的にはトップアスリートを対象としてきました。約15年間続けてきた中で、ふと立ち止まって考えてみると、その知識の活用範囲は幅広いなと。若手アスリートや部活生、スポーツ愛好家、もっと広くいえばスポーツに直接関わっていない一般生活者にも『毎日を豊かに生きる』という目標は同じだと思うんです。そのお手伝いをするのが、私たちの真の狙いです。ですから今後は、そういう部分においても力を入れていきたいと思っています」(小原氏)

東京大会に向けて、アスリート支援における企業の動きが活発化する中、果たして20年以降はどうなるのか、という不安を抱えているパラアスリートは少なくない。「バブル」とも揶揄する声も多い中、企業側の真意はどこにあるのか。

味の素におけるその答えは、今年5月、NTCのネーミングライツ契約を2025年まで更新したことにある。これは、2020年東京五輪・パラリンピック以降も、同社が変わらず選手たちのサポートを続けていくという決意表明だ。

食べることで、目標を叶え豊かに生きる。そのために、味の素はこれからもスポーツ支援活動を継続して行っていく。

※データは2017年7月7日時点
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