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2016年11月8日11時11分

「アスリートは結果を残せば人生が一変する。その瞬間に立ち会えるのが嬉しい」スポーツの仕事現場 メンタルトレーナー笠原彰さん(前編)

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知りたい!就きたい!スポーツの仕事現場
連載8回目~スポーツメンタルトレーナー編~
メンタルトレーナー笠原彰さんに話を聞いた
2020東京五輪に向け「スポーツ業界で働きたい!」と思っている学生や転職を希望している人が多くなる中、どんな職種があるの?どんなスキルが必要なのか?など分からないことが数あり、仕事の実際を知ることが意思決定には重要となる。そこで、スポーツを仕事としている人にインタビューし、仕事の“あれこれ”を聞いた。

作新学院大学准教授 メンタルトレーニング指導士
名前:笠原彰(かさはら・あきら)さん
職業歴:2003年~(※メンタルトレーニング指導開始)

仕事内容
・メンタルトレーニングを受けたい人に対してのヒアリング
・半年~1年をかけて指導。目標にあったプログラムを提供
・選手指導のノウハウを本やセミナーで一般の人に普及

取材・文/太田弘樹
大学3年生のとき「被験者」なったことで興味を持つ
練習の成果を試合で出すためには、トレーニングが必要だ。走る、筋力トレーニングをするなど、肉体面での鍛錬は日ごろ行っていると思うが、自身の『心』もきちんと日々鍛えているだろうか? 試合で緊張や不安を抱えながらも目標を達成したいと考えている人を心理学をベースに心の面からサポートする仕事が「メンタルトレーナー」。今回は、作新学院大学で准教授を務めており、スポーツメンタルトレーニング上級指導士などの資格を持つ笠原彰さんに仕事について話を聞いた。

笠原さんが、この仕事を就こうと思ったきっかけは大学三年生の時。アーチェリー部に所属し、『被験者』になったことが始まりだった。

「体育心理学研究室っていうところから、アーチェリー部に対して実験の被験者を頼まれたんです。そこの研究室の専門科目が生理心理学といって、心と生理学の相互作用を見るようなところだったんです。実験室に行ったら、体中にいろんな電極をつけられました(笑)。アーチェリーは、30~90メートル先にある的に矢を当てるスポーツなので、メンタルの作用が大きいということから、実験の対象になったんでしょうね」

研究室では自律訓練法といって、当時は医療関係で使われていた。それを、主任教授がスポーツ選手に使う研究をしていた。自身の競技中の脳波や呼吸、心電図といった変化を見たことで『スポーツ選手の競技に心理的な作用が大きい』ということに気がつき、スポーツ心理学に興味を持つことになる。同大学の大学院に進学、メンタルトレーニングやスポーツ選手の生理心理学的な作用・影響について研究を始めた。

「大学院卒業後は、高校の教員を目指していたんですよ。そんなとき、偶然、作新学院大学の先生から『専任の助手として来ないか』といわれました。非常勤ならありますけど、専任ということは正社員ですから、一般的に大学院の修士でそんな話が来ることは、ほとんどありません。スポーツ心理の研究も続けられると感じ決めました」
セミナーを聞いて『研究』から『実践』へと移行
2003年ごろから本格的に指導を開始。今ではセミナーを開催すると多くの人が参加する
就職後は、助手をしながら研究を続けていた。転機が訪れたのは2001年。現在、東海大学体育学部でスポーツ心理学の教授をしている高妻容一氏のセミナーを聞いたことが、スポーツ選手を指導するきっかけとなる。

「当時、スポーツ心理学も大きく分けるとリサーチとアプライという2つがありました。リサーチは『研究』で、アプライが『実践』なんです。私は、完全にリサーチのほうだったんですよね。しかし、学会で高妻先生のセミナーを聞いて、今まで思っていたメンタルトレーニングの考えが180度変わったんです」

笠原氏は以前、メンタルトレーニングは教える人の自己流、いわば『名人芸』のようで、誰にでも真似できるものじゃないと感じていた。しかし、高妻氏は色々な研究で発表されたメンタルテクニックを一つのプログラムとして提供しており、このプログラムを活かせば『メンタルトレーニングを指導できる』と思った。その後は、高妻氏の研究会に参加するなどし、多くのことを学び、03年ごろからスポーツメンタルコンサルタントとして、本格的に指導するようになった。

まずスタートさせたのは、作新学院大学でのメンタルトレーニング研究会。月1回ペースで始めた。

「同大学もですが、他大学の先生からの紹介などで、野球、サッカー、ゴルフなど色々な種目の人が研究会に参加するようになりました。そして、ゴルフ関係の繋がりから『プロテストを目指しているゴルファーにメンタルトレーニングをしてほしい』といわれたんです。そして見事に合格、そこから口コミで一気にオファーが来るようになったんです」

今まで、1000人近くの選手を指導してきた笠原さん。やはり、選手が活躍している姿を見ることが一番の喜びだという。

「スポーツの世界は結果を残せば、一夜にして人生変わりますからね。特にゴルファーは、プロテストに合格すれば、アマチュアからプロになるわけです。社会的地位は、かなり上がります。人生が変わる瞬間に立ち会えるというのは、非常にうれしいですよ。やりがいがある仕事です」(前編終わり)

後編は11月15日アップ予定
(プロフィール)
笠原彰(かさはら・あきら)さん
1968年、東京生まれ。作新学院大学准教授 メンタルトレーニング指導士。スポーツメンタルの現場でコンサルティング指導を3000時間。海外でプロ・コンサルタント資格を取得できる基準をはるかにしのぐ指導実績を持つ。スポーツ分野では、野球・ゴルフ・テニス・サッカー・陸上・バレーボール等アマチュアからプロ、コーチまで多数の指導を行っている。HP:メンタルワークアウト
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