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2016年6月28日10時07分

「情報の質とスピード、そして『おまけ』をつけることがこの仕事には大切です」スポーツの仕事現場 プロバレーボールアナリスト渡辺啓太さん(後編)

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知りたい!就きたい!スポーツの仕事現場
連載7回目~スポーツアナリスト編~
取材・文/太田弘樹
選手同様アナリストにも調子の良し悪しはある
アナリストという職業は、情報を集めて、分析、加工、それを監督やコーチ、選手など意思決定者に対して、戦略的に提供するというのが主な仕事内容。試合時にはどのようなことをしているのか、具体的な1日の流れを聞いた。

1 事前の資料作成
「例えば、試合開始前に朝のミーティングが8時にあったとします。その前に対戦相手の分析資料や映像を作成します」(渡辺さん以下同)

2 試合会場でのデータ収集
「会場に到着し、私のチームが試合をする前にすでに他のチーム同士が試合をしている場合は、そのデータを取ります。その後、日本チームの試合のデータを収集します」

3 試合後に内容を選手に伝える
「試合が終わり22時ごろにホテル到着。その日のうちに選手が来て、自身の映像の振り返り、明日の準備のための映像を提供します。もし何か相談があれば、選手と話をしたりして、0時ぐらいには寝て朝3時ごろに起床し、次の試合の資料を作成します。試合が続くときは、その繰り返しですね」

その中でも1番重要視しているポイントは、やはり試合中だという。

「選手に調子がいい、悪いってあるじゃないですか。それと同様に、実はアナリストにも調子がいい、悪いってあるんです(笑)。頭が回転するか、しないかみたいな。試合中リアルタイムで最新の情報が入ってきて、リアルタイムでそれに対して応えているので、そこで一番の集中力を発揮しなきゃいけないと思っています。試合の展開とか、監督がこういうときにはこういう交代をするだろうなとか、自分の頭で想定できるように準備していますね。もし相手チームが、いつもと違うことをやってきたことに気が付いたときは、伝えて、対策を練るということを瞬時にしています」

また、この仕事を行う上で一番気にしていることは『情報の質』と『スピード』、そして『おまけ』を付けることだという。

「『質』が悪かったら信用を失います。その後の意思決定や判断を誤らせてしまうので…。あとは『スピード』です、「これある?」と言われたときに、いかに早く出せるか。1週間経って出したら、もうそれ別にいいやみたいな話になるとか、やっぱり情報って受け取るタイミングによって価値が全然違うので、スピーディーに出すということはとても大事にしていますね。あとは、私から見れば監督や選手はある意味大切なクライアントなので、その方たちに最適なデータを渡すようにしています。同じデータでも、やはり加工によって見え方が違ってきます。プロとして仕事をしていて、期待されたものをそのまま返すというだけではなく、何かプラスアルファをする。「ちょっとこの数字調べてみてくれない?」と言われたら、調べてわかりやすく説明しますが、それに付随して、こういうことも分かりましたとか、表現がいいかわからないですが『おまけ』をつける。この選手にこの情報を教えれば、少しでもパフォーマンスの向上につなげてもらえるとか、相手に有益だと感じてもらえるように心がけています」
現場での活動が一番大切
まず関わりがあるチームで分析をしてみる
日本スポーツアナリスト協会(JSAA)の代表理事として、他競技のアナリストの交流のためのカンファレンス「スポーツアナリティクスジャパン」も開催
試合がない時期は、大会後の修正ポイントを記した資料などを作成したり、様々なカテゴリのバレーボールや他競技の試合なども視察している。また、14年6月に設立された日本スポーツアナリスト協会(JSAA)の代表理事として、他競技のアナリストの交流のためのカンファレンス「スポーツアナリティクスジャパン」の開催や職域拡大を目指して活動している。

「色々な方たちから、僕が個人的に学びたいなと思っていることを大きくしたみたいな(笑)。カンファレンスという形にしたほうが、いろんな方に来ていただけて、アナリスト同士の交流ができる場所になると思いました。また、今後様々な活動をしていくうえで、個人ではなく、団体としてアナリストたちの組合じゃないですけど、話を集約する場所があれば、組織と組織として話ができると感じました」

最後に、この仕事に就くためにはどのようなスキルが必要なのかを聞いた

「勘違いが多いのは、分析ソフトが使える=アナリストと思っている人がいますが、そうではありません。分析力、あとは現場のニーズをしっかり把握して、そこに合わせた形で提供することが大切です。そして絶対に必要なのは、コミュニケーション力です。競技を知っているに越したことはないですが、例えば私が他競技のアナリストになったとしても、コーチの人などと密にコミュニケーションを取れていれば、なんとか補ったり助けてもらったりすることができるかもしれません。アナリストになりたいという方の声は年々増えています。そういう志のある方は、まず現場での活動が大事なので、自分がプレーしているチームなど関わりのあるところで、分析するということを少しずつでいいので行ってみてください。またバレーボールの場合は、1年に1回、必ずアナリスト育成セミナーを開催しているので、興味のある方はそちらにいらしてください」

(プロフィール)
渡辺啓太(わたなべ・けいた)さん
1983年東京生まれ。全日本女子バレーボールチーム情報戦略担当チーフアナリスト。一般社団法人日本スポーツアナリスト協会代表理事。専修大学ネットワーク情報学部客員教授。日本のバレーボールアナリストでは初めてオリンピック日本選手団役員としてチームに帯同。2012年ロンドンオリンピックでは銅メダル獲得に貢献。
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