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2016年5月24日15時25分

酔いどれDの妄想一献“スポーツのある風景” 第4話『愛すべき劇画的個性たち 落合博満から大谷翔平までパ・リーグが育む土壌とは?』(前編)

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日本を代表する選手となった大谷翔平。パ・リーグでも輝きを見せている。写真・Getty Images
スポーツ業界で働き、酸いも甘いも知り尽くすベテラン・テレビディレクターが、6割事実4割が妄想!?の『スポーツ界こんな話あったんだ!』というネタを、今宵の一杯とともに紹介することもある、ゆるーい連載。夜な夜な、お酒の肴の一つに加えてみては?

酔いどれDが推奨!この噺には、この一杯!
日本酒『新政』
「今回のお酒は、この業界のイロハを教わった私の師匠である東北出身の先輩カメラマンが愛した秋田の銘酒・新政をぬる燗で。肴は秋田の初夏の味覚『じゅんさい』。おろした長芋に、じゅんさいをのせて、出汁醤油をかけていただく。ツルリと喉を抜けて行く野趣を、新政のぬる燗が追いかける。じゅんさいをひと口、で、盃が追いかける。ひと口、追いつき、またひと口と、繰り返せば、悦楽」(酔いどれD)
日本を代表する選手大谷翔平は
野手向き?投手向き?
現在、プロ野球界の中心にいる選手は誰か?と問われれば、北海道日本ハムファイターズの大谷翔平で異論がないと思う。

2メートルに迫る身長、長い手足、しかもイケメン。投げては160キロの速球と、落差の大きな変化球を自在に操る。バットを握れば豪快に振り切るスイングと柔らかなバットコントロールを使い分ける器用さも持っている。冷静に、自他を見極め、状況を分析する優れた頭脳。それを解かりやすく客観的に語れる伝達力。失敗を繰り返さない修復力。ちやほやされても舞い上がらず自らの意思を貫く強い精神力。怪我をしにくい、しなやかな肉体、等々。勿論、御本人が努力した部分もあるとは思う、あるとは思うが“野球の神様”が与えた溢れるばかりの才能、天井知らずのポテンシャルに、むせ返りそうだ。

プロ入り4年。そろそろ将来を考え、投手か、野手か進むべき道を決めるべきだと進言する関係者の声は多い。曰く「160キロのボールを投げられるピッチャーは、世界を探したってそうはいない」とか、「柔らかさと、豪快さを併せ持つバッターだって、やはり世界にはいない」果たして大谷の正しい選択はピッチャーか、バッターか。尽きる事のないこの議論、最高の“酒の肴”である。

80年のプロ野球史を紐解いても傑出した才能といえる大谷が立つべきポジションは、グランドの中心で試合を主(つかさど)る役割、やはりピッチャーではないかと思う。一方で、劇画の主人公の如き二刀流の活躍を果たし、いつまで私たちを楽しませてくれるか。きっと数十年後、「大谷って凄かったんだぞ、ピッチャーでは160キロ、バッターでもバックスクリーンに凄いホームラン打ったんだ」と、酒場の片隅で語られる日が来るのだろう。
パ・リーグは長所を伸ばしてくれる環境
さて、野球好きが必ず肴にするものに“オールタイム・ベストナイン合戦”がある。オリンピック、WBC(※ワールド・ベースボール・クラシック)などプロ野球の国際試合数も増えて「侍ジャパン」などベストナインと接する機会は随分と増えた。

とはいえ「球界ナンバーワンのピッチャーはやっぱりダルビッシュ有だ、田中将大だよ。いやぁ、野茂英雄だ。江川卓でしょ。金田正一だ、村山実、稲尾和久、尾崎行雄、澤村栄治…。4番は松井秀喜、王貞治、長嶋茂雄、川上哲治、大下弘か…」時代を超えたオールタイムのベストナインを語るのは実に楽しい。自らが立ち会った、ご贔屓選手のワンプレー、心のスコアブックに焼き付けられた一瞬の記憶、それがベストナイン選出の唯一無二の基準である。

東北岩手県で生まれた大谷は、花巻東高校のエースで四番。高校生離れした剛速球と打撃センスで全国にその名を知られた。2012年ドラフト会議直前、メジャーリーグ行きか、プロ野球入りかが注目された。ドラフト会議では、半ば強引に北海道日本ハムファイターズが1位で指名。その際、プロ野球では邪道といえる「二刀流」を栗山監督、そしてチームが提案。こうした『提案』ができる環境がパ・リーグならではの“幅と奥行きと懐の深さ“だと思う。

今年も5月31日から始まるセ・パ交流戦。05年から実施されて以来、双方の交差は増え、両リーグの差異はほとんどなくなった。しかし、かつては全てがセ・リーグ中心。試合中継は90パーセントが巨人戦。新聞やテレビなどのメディアの扱いもパ・リーグの球団は圧倒的に少なかった。

パ・リーグは人気、話題、観客動員の対策としてDH制の導入や、前期後期の2シーズンに分けてのプレーオフ制、そして予告先発も早くから取り入れていた。しかし当時、シーズン中に、パ・リーグの球場が満員になる事は“稀”。だからこそセ・パでは、プロとしての考え方、野球への向き合い方、こだわり方など、違う環境が形作られた。

大雑把にいうとパ・リーグにあるのは個性を容認する、短所を修正するのではなく長所を伸ばす環境である。メジャーに進んだ“トルネード投法”の野茂英雄を始め、“振り子打法”のイチローなど、野球の教科書には書かれていない、基本から大胆に飛躍した応用を認める場所だと思う。個性豊かなキャラクターを育む有難い土壌である。

後編は5月31日アップ予定!
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