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ゴルフ米女子ツアー挑戦1年目の真実(前編)

2016年1月28日17時07分

「当初は『優勝』という二文字が見えなくなっていた」森川陽太郎氏だから分かった横峯さくらの変化
ゴルフ米女子ツアー挑戦1年目の真実(前編)

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日米の差に当初は困惑
元サッカー選手でスペインやイタリアでプレーした経験のある森川陽太郎氏。 引退後27歳でリコレクト社を設立。「OKラインメンタルトレーニング」というトレーニング方法で、スポーツ選手中心にメンタルサポートを展開している。2015年、プロゴルファーの横峯さくらが米女子ツアーに挑戦。そのサポートをするために、夫でもある森川氏も1年間米女子ツアーに帯同。共に戦い抜いた米女子ツアー初挑戦は、どのようなものだったのか話を聞いた。
ゴルフ米女子ツアーは、現地1月28日ピュアシルクバハマLPGAクラシックからいよいよ16年シーズンの幕を開ける。

15年シーズンは1つの驚きがあった。それは横峯さくらの米女子ツアー参戦だ。14年に行われた米女子ツアー出場権を懸けたクオリファイングトーナメントに出場、11位タイという成績を残し、ほとんどの試合に出場できる権利を得たことで、昨年は米国に拠点を置き戦った。

ルーキーシーズンは、26試合に出場。トップ10が2回、自身の最終戦となったロレーナ・オチョア招待での5位が最高位だった。優勝は飾れなかったものの、およそ38万ドル(約4500万円)を獲得し、賞金ランキングは44位、80位までに与えられる翌年のシード権を獲得し、今シーズンも米女子ツアーで戦う。

そんな彼女の挑戦を支えているのがメンタルトレーナーの森川陽太郎氏。森川氏は、16年シーズンも米女子ツアーで横峯をサポートするが、その前に初挑戦となった15年シーズンを振り返ってもらった。

「想像以上に疲れた1年で、こんなに大変なんだなって思いました(笑)。移動、そしてホテル暮らし、また横峯はコースが分からなかったことへの恐怖感がありました。日本では10年間ずっと知っているコースを回っていたので、コースが分からないことへ対しての不安があり、それをどのように解消していけばいいのか、すごく難しかったですね。米女子ツアーにフィットするというのが精一杯という1年でした」

日本と米国の違いに当初は戸惑いを見せたという森川氏。 何もかも違う環境になったことで、どこでゴルフのスイッチをオフにすればいいのか?何も考えずにやっているとずっとオンのままでいつの間にか疲弊している。そして米女子ツアーに出場している選手たちの実力の違いを肌で感じ、日本では考えられないようなスコアをたたき出し優勝する姿や予選通過のカットラインの高さに衝撃を受けたという。それは、横峯も感じていたのかもしれない。国内女子ツアーで予選通過「101」の記録を作るほど、安定したプレーを披露する選手だが、米女子ツアー初戦から3試合連続で予選落ちをするという事態に陥ってしまったのだ。

「あのときは、本当に落ち込みました。『ヤバいね』という言葉しか出ませんでした。日本だと無意識に優勝を目指していましたが、米国に行った当初は『優勝を目指す』ことをかなり意識的にやらないと、自分のステージを勝手に下げちゃうという感じがすごくあったんです。まず『予選突破すればいい』みたいな、言葉や生活環境の変化で不安が多く、目標をすごく下げていた。だから次の試合の前には、3試合連続で予選落ちしていますが『優勝目指して頑張ります』という強気な言葉を発しっていこうという話をしました」
良くも悪くも環境が意識を変えてしまう
横峯は初めて回るコースが多く当初は不安があったいう。写真提供・リコレクト
日本にいるときは、優勝だけしか意味がないというふうに感じていた横峯。しかし森川氏は、そのハードルの高さでは自己否定感が強くなり実力を発揮しずらくなると思い「今自分ができること」を行い、それができたらOKを出す「OKライン」というメンタルトレーニングで「なぜ1位になれない」ではなく、「緊張した中でも2位入れた」と『こんなに緊張していてもできた』という成績とは異なる自信を積み重ねていくようにサポート。その結果、1年11カ月優勝から遠ざかっていた時期に、2試合で優勝することができた。

しかし、米国では違う。日本のときとは逆で「優勝」を意識しなくては、予選通過すらままならないということが分かった。なぜ180度思考が変わってしまったのか。

「やはり日本にいるときとは違います。トップ選手としてではなく、当然ですがクオリファイングトーナメント11位の選手の扱いです。だから、スタート時間もバラバラ、一緒に回る選手のレベルもまちまちでいつもの自分のペースでプレーすることが難しい。色々なことを気にしながらゴルフをしなくてはいけない環境の中で、「優勝」という二文字に全くリアリティが無くなっていたんです。前まではハードルが高すぎたからこそ、優勝以外の順位を自信にかえていくことが必要でした。しかし、アメリカではハードルが低くなっていました。「優勝」というものに意識が向いていない状態でプレーをする機会が増えてしまったんです」

日本では23勝している横峯も米女子ツアーでは新人。当初はそのギャップに苦労していたが、シーズン中盤に入ると成績も出るようになり、少しずつ自信を取り戻していった。

「成績が出はじめた1つの要因として、すごく大きな出来事がありました。それは、6月に行われたKPMG全米女子プロゴルフ選手権で13位タイに入ったあと、キャンピングカーを購入したことです。今までのホテル暮らしは荷物を置く場所も無かったので、やっと自分たちの場所ができたという感覚でした。購入した理由ですか?それは飛行機に乗ったときに、とてもはげしく揺れた時があったんです。それがとても怖くて、スチュワーデスさんもお祈りを始めちゃうぐらい揺れたんです…。その体験から飛行機に乗るのが怖くなり、それで1回長距離をクルマで移動したんです。クルマの床にマットを敷いて移動したんです。そうしたら、とても楽で体も疲れなかったんです。やっぱり体は大事だよねということになり、長い目で見てもキャンピングカーのほうがいいということで購入に至りました」
購入したキャンピングカーで移動することで、リラックスして大会に挑めるようになった。写真提供・リコレクト
横峯は日本にいたときもキャンピングカーで移動していた時期があった。慣れ親しんだ乗り物に変えたことで、リラックスして大会に挑めるようになったのか、購入後からは8試合連続で予選を通過し、本来の横峯らしさが戻っていた。しかし、9月フランスで開催されたメジャー大会ザ・エビアン選手権で新たに『再認識しなくてはいけない』出来事に遭遇する。(前編終わり)

取材・文/太田弘樹
(プロフィール)
森川陽太郎(もりかわ・ようたろう)株式会社リコレクト代表
1981年4月7日生まれ、東京都出身。元サッカー選手でスペインやイタリアでプレー。その後心理学やメンタルトレーニングを学び、27歳で株式会社リコレクトを設立。「OKラインメンタルトレーニング」という独自のトレーニング方法を展開。著者に「絶対的な自信をつくる方法「OKライン」で、弱い自分のまま強くなる」や「ネガティブシンキングだからうまくいく35の法則」などを持つ。HP: リコレクト
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