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2016年1月19日16時45分

「きちんと取材したいので、自腹でも試合前の情報収集は欠かしません」スポーツの仕事現場 ピッチレポーター日々野真理さん(前編)

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知りたい!就きたい! スポーツの仕事現場連載6回目
~フリーアナウンサー編~
2020東京五輪に向け「スポーツ業界で働きたい!」と思っている学生や転職を希望している人が多くなる中、どんな職種があるの?どんなスキルが必要なのか?など分からないことが数あり、仕事の実際を知ることが意思決定には重要となる。そこで、スポーツを仕事としている人にインタビューし、仕事の“あれこれ”を聞いた。

職業:フリーアナウンサー(ピッチレポーター)
名前:日々野真理(ひびの・まり)さん
職業歴:1999年~(ピッチレポーター)

仕事内容
・事前取材をしてチームの内情を知る
・チーム資料を作り情報をインプット
・試合の流れを見て「ここ」というときにレポート
・試合後のヒーローインタビューを考える
きっかけはアナウンサー募集の新聞広告
サッカーのテレビ放送に欠かせないのが解説・実況、そしてピッチレベルから情報を届けてくれる『ピッチレポーター』。今回は、サッカーのピッチレポーターの仕事を中心に、フリーアナウンサーとして活躍している日々野真理さんに「話す」ことを仕事にしたワケと、この仕事に就きたい人へ向けたアドバイスを聞いた。

日々野さんは、小さいころ弟がサッカーをしていることがきっかけで、サッカー見るということが当たり前の生活を送っていた。そして高校生の時にはサッカー部のマネジャーをし、オリンピックもテレビにかじりついて見て、お小遣いを握りしめて写真集を買うほどスポーツが大好きだった。

しかし短期大学卒業後、すぐにスポーツに関わる仕事についたわけではなく、語学を勉強したいという理由から米国に留学。現地では、ロケーションコーディネーターの仕事の手伝いをしていながら2年間過ごしていた。そんな中、仕事の面において社会人としてビジネスマナーなど社会人としての基本を学びたいという思いを感じ日本へ帰国し、流通関係の会社に就職。転機になったのは、3年間働いた会社を辞めたときだった。

「次の可能性を探ろうと思った時に、新聞にたまたま“アナウンサー募集”と掲載されているのを見たんです。応募条件として経験者、そして英語が話せれば尚可などが書いてあったんです。経験はないけれど、英語が話せるので応募してみようという感じで、履歴書を出しました。なので、最初からアナウンサーを目指していたわけではなく、英語を活かす、そして人と話すことが好きだったので『いいかも!やってみよう!』というところが、この仕事に就いたきっかけですね」

書類審査、そしてオーディションを見事に合格し、事務所と契約。その後レッスンを受け、1995年にフリーアナウンサーとして活動を始めた。

「最初はスポーツではなく、情報番組とか報道とかお堅い番組のレポーターや司会の仕事をいただくことが多かったんです。とてもありがたかったんですが、折角アナウンサーになれたんだから、ずーっと好きだったスポーツの仕事がしたいな、特にサッカーの仕事がしたいなという気持ちがありました。何回か事務所に相談しているうちに、サッカー中継を担当している方とかを紹介してもらったんですが“お堅い番組のレポーター”としてのイメージがついてスポーツの雰囲気がなかったんでしょうね、書類で落とされるという感じでした」

そんな中、1つ面接を受けられる機会がおとずれた。 それが、日々野さんをサッカーの仕事に向かわせるきっかけとなった。

「オーディションの場は、99年ヤマザキナビスコカップ準々決勝第1戦、浦和レッドダイヤモンズ対鹿島アントラーズ戦で『なんでもいいからその場で感じたものをカセットテープに入れて渡してくれ』といわれました。必死だったので、何を話したかはあまり覚えていないんですが、たぶんサポーターの様子やスタジアムの状況を伝えたはずです(笑)」

結果は見事に合格。99年より念願だったJリーグのピッチレポーターとして、サッカーの仕事の扉を開いた。しかし、サッカー1本ではまだ食べていけるわけではなく、報道や情報関係の仕事は並行して行っていたもののサッカーに対する情熱は常に持ち、仕事に邁進していた。

「きちんと取材をしたいと思いホーム・アウェイ関係なく、自腹で試合前日に入って情報を集めていましたね。当時サッカーの仕事はとても少なく、事務所の人にも仕事の多い野球や競馬の仕事を勧められました。ただ、それも悔しくて“サッカーだけで女性アナウンサーがやっていけるようになればいいんでしょ”と心の中でちょっと思っていました(笑)。自腹であろうが、選手の話をきちんと聞いた上でリポートするのが筋だろうと思ったんですよね。中継ですぐに使う内容ではなくても、取材したことが後に何かに繋がればいい、今起きていることは、今しか話が聞けないという気持ちが強くあったんです。だから、先行投資という訳ではなんですけど、自分の情熱のほうを取りましたね」
ピッチレポーターの仕事内容とは?
『言葉選びがすごく重要』と話す日々野さん
ピッチレポーターとは具体的にどのような仕事なのだろうか。順番を追って日々野さんの仕事内容を教えてもらった。

1事前取材
「チームがどういう状況にあるのか、温度感を知っておきたいというのがあります。選手たちから話を聞く。そして、試合に向けたポイントを自身で整理します」(日々野さん・以下同)

2資料作り
「中継の時のための資料作りを行います。事前に取材したものを利用して、資料を作りインプットするんです。だいたいの情報を見ないで行えるぐらい。サッカーは突発的に何かが起こるスポーツです。色々な状況がリンクするので、ここというときに“この情報を”という準備はある程度しておきたいんです。とても重要で大事なことなので、時間かかりますが、やっておいた方が、私は落ち着いた気持ちで試合に入れます」

3試合中
「実況・解説者の話を聞きつつ、ピッチで起こっていることとかベンチの回りで起こっていることなどを見て、レポートを挟みます。どこのタイミングでレポートを入れるか、時間は決まっていないんです。予定調和がないのがレポーターの仕事なので「ここ!」というときに、こちらが好きにいっていいんです。「ここ!」を逃したと思ったら話さないでスルーします。持っている情報を全てを入れようとすると失敗してしまうので、捨てる勇気がとても大事です。自分が知っているからいいたいというのではなくて、タイミング良く的確に情報を入れて、見ている人がそうなんだと思ってくれるレポートを心がけています」

4試合終了後&ヒーローインタビュー
「自身である程度のヒーローインタビュー内容を考えます。質問は凄く考えますね、選手全員のデータを見て、何年目かなとか、移籍の情報とか、とにかく最新の情報をアップデートするために毎回試合前に資料は見ています。選手の返答により即座に質問を変えることもあります。試合後はミックスゾーンで取材をして、自分の中で気になったことを選手や監督に聞いて、次の中継に活かします」

上記のような工程でピッチリポーターの仕事をこなす日々野さん。仕事で気をつけていることを聞いた。

「言葉を使う仕事なので、言葉に対する難しさは常に感じています。多くの人が見ている=同意見の人ばかりではないので、言葉選びがすごく重要です。ヒーローインタビュー時には、アウェイチームの人も聞いていますし、もし残留争いをしていて負けたらサポーターはどんな思いだろう?とかも知っていないといけないです。また、無難な質問をして会場をシラケさせてもいけませんし、加減はとても難しいです」

取材・文/太田弘樹
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